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本会議場で泉房穂・明石市長の言動をただす市議(手前)=明石市議会
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 兵庫県明石市議に対する暴言の責任を取り、政治家引退を表明した泉房穂市長。そんな彼がツイッターで発する言葉に多くの人が引きつけられている。なぜなのか。

 「明石に住んでいてよかった」。同市で暮らすパート勤めの女性(44)は4年前、恩恵を肌で感じた。

 当時小学5年の長男が意識を失って倒れ、てんかんだと判明。高額な治療費を覚悟で市外の専門病院を受診したが、明石市民は無料と告げられた。泉氏が子どもの医療費を所得制限なしで無料にしていた。

 「息子が発病するとは思ってもいなかった。助けてもらえてありがたかった」

 そうした体験もあり、女性は毎日、泉氏のツイートをチェックしている。先進的な子育て支援策の実績を手に、動きが鈍い国に怒りの矛先を向ける投稿もあるが、女性は「市民を思っているのが伝わってくる」。市議への暴言にも「駄目だけど市民のための改革を理不尽に邪魔され続けた。怒って当然」と言い切る。

 ただ、投稿内容の事実関係になるとおぼつかない。市長や議員とじかに話したことはなく、自らリツイートしたこともない。「理不尽な邪魔」の中身も具体的には分からないという。

 「説明責任を果たす」。泉氏が大義名分を掲げて始めた発信は21日で丸1年になった。投稿が届くように登録し、つながりを持ったフォロワーは首長では屈指の約39万人。小池百合子東京都知事の約93万人、吉村洋文大阪府知事の約128万人には及ばないが、市の人口をはるかに超えた。

 市長とともに自治体を動かす車の両輪にも例えられる市議会で、ツイッターを使う議員は29人中15人にとどまる。フォロワーは合わせても約8千人で、発信力の差は歴然としている。ある議員は不安を漏らす。「市長の発信ばかりが市民に届き、それが事実として定着してしまうのが怖い」

 神戸新聞社が11月、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で意見を募ったところ、泉氏のツイッターを頻繁に見ている人ほど、市政の評価が高い傾向がうかがえた。

議会と対立 泉氏「理不尽ないじめ」市議側「相反する意見を排除」

 明石市の泉房穂市長は、2019年からの3期目に入ると、独自の子育て支援策を加速させた。昨年始めたツイッターで「明石発」支援策の意義を説くが、実際はどうか。

 中学校給食や高校3年までの医療費を含め、五つの無料化(第2子以降の保育料、1歳までのおむつ代、屋内遊戯施設などの遊び場)で親の負担を軽減。周辺市町からファミリー層などの流入を招き、10年連続の人口増を達成している。

 ツイッターでは「明石の取り組みを全国に広げる」と宣言。自身を群れの中で真っ先に海に飛び込んで後続を促す「ファーストペンギン」に例え、一自治体から国に改善を迫ってきた。

 施策の実現に必要な財源を巡っても「(子育て支援の)お金なんて(自治体の)やりくりで何とでもなる」と歯に衣着せぬメッセージで、注目を集める。

 泉氏が政治家引退を表明するきっかけとなった市議会との関係も、3期目に悪化している。

 「専決処分に至った段階ぐらいで議会との関係がきつくなった」(泉氏)。独自施策に取り組む泉氏に対し、市議会は検討を加えつつ、その多くを容認してきたが昨夏、歯車が乱れた。

 施策の可否は最終的に議会が決めるが、例外的に首長が代替することがある。昨年8月、市はコロナ禍の支援で全市民に5千円券を配る議案を提出。だが議会は配布方法に経費削減の余地があるとして、継続審査を決めた。泉氏はその直後、スピードが必要として専決処分で実施を決めた。

 議会側はその行為を議会軽視と受け取り、「感情的対立が政策的にも飛び火した」(泉氏)。泉氏は議会に矛先を向けて「理不尽な嫌がらせがある」などと批判する投稿を続けた。

 「自分と相反する意見を排除する姿勢が見られる。危険で不適切」。自民や公明党の市議13人は今年10月、泉氏の問責決議案を提出した。議会軽視やツイッターでの税情報漏えいなどの責任を問う内容だった。

 泉氏は市議2人に対し「(問責決議案に)賛成したら許さん」「次の選挙で落としてやる」と迫った責任を取るとして、任期満了の来年4月に退任する。(統一選取材班)

 首長や多くの地方議会が改選される統一地方選が来春に行われる。連載「わたしたちの政治」第1部では、明石市長のツイッターでの発信に焦点を当て、自治体運営を考えます。

明石統一地方選わたしたちの政治泉・明石市政を考える
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