言葉のつぶてのような歌集ができた。先天性の脳性まひで重度障害がある神戸市兵庫区の佐藤栄男(しげお)さん(47)の作品だ。歌集作りを勧めたのは定時制高校時代の恩師。「俺に短歌なんか書けるか」と二の足を踏んでいたが、二人三脚で完成させた。(木村信行)
神戸市立楠高校の元国語教諭、増住恵(ますずみめぐむ)さん(69)=神戸市垂水区=が短歌作りを勧めた。
2年前、佐藤さんは「僕の仕事は重度身体障害者」というタイトルの自伝的文章を15年かけて完成。その冊子作りを佐藤さんの在学中から手伝ってきた。もう書きたいことはなくなった、という佐藤さんに「その暴れ狂うような感情を、時々にまとめたほうがいい」とアドバイスした。
佐藤さんは毎週、パソコンに言葉の断片を書き連ねた。増住さんは月2回、佐藤さんの自宅を訪ねて言葉に込めた思いを聞き取り、2人で推敲(すいこう)を重ねた。
歌集は、佐藤さんの最初の「言葉の原石」と、完成した短歌の両方を並べ、2人の共同作業の過程が伝わるように工夫した。
例えば、「障害者 佐藤栄男はこの役に金属疲労 精神的疲労45年目 疲れてる」はこうなった。
〈アクセルを 踏み続けてきたけれど 凸凹ロードで金属疲労〉
◆
佐藤さんが特に思いを込めたのはトイレシリーズだ。
障害者にとって排せつは、毎日訪れる憂鬱(ゆううつ)な自然現象という。「気にする必要はない」とヘルパーさんは言ってくれるが…。
〈便意来た 出すときいつも悩んじゃう 介助者の顔 想像してまう〉
〈気兼ねなく お風呂にトイレ 行けません 障害者ゆえの心の葛藤〉
そこで佐藤さんが考案したのが「トイレ付き車いす」だ。座席の下に簡易便器を置き、普段から穴のあいたパンツとズボンをはいて座る。これで24時間の介助者は不要になり「排せつ問題の7割は解消した」と言う。
〈一人ほど 気楽な気分は ないものだ 車いす便器が それをくれた〉
佐藤さんにとって自由とは、1人で排せつをする自由である。
◆
6カ月で63首が完成した。「短歌作りは面白かったが、こんなに大変とは思わなかった。今回が最初で最後」と佐藤さん。
歌集「名刺」は500円(送料別)。
■「彼の必死の思いを形にしたかった」 定時制高校元教諭・増住恵さん
増住恵さんは、夜間定時制の神戸市立楠高校に新任から39年間勤め、6年前に定年退職した。
働きながら通ったり、不登校から抜け出そうとしていたり。さまざまな事情を抱える生徒と短歌を作り、文化祭で全員が発表する取り組みを続けてきた。
そこに27歳で入学してきたのが佐藤さんだった。ある日、職員室にやってきて、パソコンに書きためていた自伝のような文章を「見てほしい」と頼んできた。障害者を取り巻く社会環境や自分の置かれた立場を冷静に観察しながら、それでも社会を変えたい、という熱意がほとばしっていた。
「大人やな、と。彼の必死の思いを形にしたい」。以来、月に2回は佐藤さん宅を訪ね、文章を添削してきた。増住さん自身、佐藤さんと出会って考え方が変わったという。「障害者と健常者の間に存在している『無意識の壁』が消えた。そもそも壁なんかなくて、こっちが勝手につくり上げているだけだった。人と人が付き合う。当たり前のことですけどね」
教師という仕事を卒業しても、増住さんの「教師」生活は続いている。
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