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世界マスターズ陸上競技選手権で優勝し、日の丸を手にする福田博之さん(右)=7月、フィンランド・タンペレ(本人提供)
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世界マスターズ陸上競技選手権で優勝し、日の丸を手にする福田博之さん(右)=7月、フィンランド・タンペレ(本人提供)

 今夏の世界マスターズ陸上競技選手権の男子40~44歳110メートル障害で優勝した神戸高校数学教諭、福田博之さん(43)が、大学受験を控える同校の3年生約340人に向けて講演した。数々のアクシデントを乗り越え2度の世界一に輝いた経験から「今できることに集中を。情熱的に思ったことを大事にして」と語りかけた。(藤村有希子)

 35歳以上の選手が5歳ごとの区分で争う同選手権への挑戦を続ける福田さん。190センチの長身から繰り出す大きな歩幅と、鋭いハードリングが持ち味だ。

 長田高や筑波大在学時は目立った成績を残せなかった。だが教員になって飛躍し、全日本実業団対抗選手権では決勝に進み、31歳で自己新記録をマーク。今も勤務の傍ら、神戸高陸上部で教え子と練習している。

 10月にあった講演会では、世界マスターズに初出場した2014年ハンガリー大会の逸話を披露。経由地のドイツ・ミュンヘン空港で足止めを食らい、大会会場への到着がぎりぎりの時間になりそうだった。

 置かれた状況で最善を尽くそうと考えた福田さんは同空港で、ジャージー姿でウオーミングアップを開始。35~39歳60メートル障害の予選レースに滑り込み、決勝ではトップと千分の3秒差で2位に入った。

 翌15年には、世界マスターズ3週間前に出場したレースで転倒。右足のスパイクのピンで左脚の皮膚がえぐられ、縫合するけがを負ったが諦めない。同110メートル障害で初優勝し「嫌なことはいくらでもある。ハードワーク自体を面白がれる人は強い」と実感を込めた。

 そして今年7月の世界マスターズに向けても、困難は手を緩めてくれなかった。レース1カ月前にぎっくり腰を発症。体調に細心の注意を払ってフィンランドの試合会場にたどり着くと、今度はスパイクを点検した係員から使用を禁じられるなど、トラブルが続いた。

 それでも「結果や未来を思い悩まず、今に集中を」と予選をトップ通過すると、決勝でも後続に大差をつけて14秒50で1着。7年ぶりに世界一を手にした。

     ◇

 前向きな思考は人生を豊かにする。「レースに向けた計画、準備、参加、振り返りのすべてが楽しい」と福田さん。「成功する人は総じて素直。人に何かを勧められても、自分のスタイルにこだわりすぎると伸びない。目指すところにいくには何が必要かを考えよう」とも訴えた。

 締めくくりに、「情熱の見つけ方」を教え子に伝えた。「情熱が持てないときは、何かに関して上手にならないといけない。上手になると苦痛ではなく、面白くなる。大事なのは強みをみつけ、伸ばすことだ」

 講演を聴いた生徒(18)は「以前は勉強も部活動も漫然としていたけれど、将来の目標が見つかった。だから、つらいことがあっても踏ん張れる。目標に向かって一生懸命な福田先生を見て、受験生として勇気をもらった」と話した。

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