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父三郎さんの遺影を抱いて語る三木英一さん=姫路市本町(撮影・辰巳直之)
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父三郎さんの遺影を抱いて語る三木英一さん=姫路市本町(撮影・辰巳直之)
兵庫県遺族会の三木英一副会長の父、三郎さんの遺影=姫路市本町
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兵庫県遺族会の三木英一副会長の父、三郎さんの遺影=姫路市本町
祖父の記録を手に「祖父や多くの人の無念を風化させたくない」と話す荒堀修一さん=神戸市中央区
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祖父の記録を手に「祖父や多くの人の無念を風化させたくない」と話す荒堀修一さん=神戸市中央区
全国戦没者追悼式の会場に入る松尾恭樹さん=15日午前、東京・日本武道館
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全国戦没者追悼式の会場に入る松尾恭樹さん=15日午前、東京・日本武道館
曾祖父への思いを語る松尾恭樹さん=東京都内
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曾祖父への思いを語る松尾恭樹さん=東京都内

 終戦から77年。長引く新型コロナウイルス禍は遺族らの慰霊の取り組みにも影を落とすが、15日の全国戦没者追悼式には兵庫から幅広い世代が参列した。戦没者の子、孫、ひ孫-。年代も戦争の記憶もさまざまな3人に平和への思いを聞いた。(貝原加奈、末永陽子)

 ■パラオ島で父が戦病死

 三木英一さん「引き継ぐことが使命」

 出征した父との手紙や写真のやりとりも、2年ほどで音沙汰がなくなった。「終戦後、半年が過ぎても父は帰ってこなかった」。兵庫県遺族会副会長の三木英一さん(87)=姫路市=は父三郎さんの遺影を手に、幼少期の記憶をたどる。

 英語教師だった父は終戦の4年前に召集され、旧満州(現中国東北部)に渡った。10歳の時、戦争が終わったと知った。「よく本を読んでくれた優しい父が帰ってくる」。胸を膨らませ帰りを待ったが、終戦翌年の2月、「パラオ島で戦病死した」と通知があった。しばらくして丸眼鏡とペン、色あせた家族写真、そして小さな遺骨が届いた。

 日々食べることにも窮する生活。「お父さんのところに行こう」。三木さんら3人の子どもを連れ、心中しようとした母を「僕が頑張るから」と必死に止めたこともあった。

 父の遺志を継ぐように英語教師になり、20代の頃から遺族会の活動も続ける。突き動かすのは「私のような経験は誰にもしてほしくない」との思いだ。「若い世代に歴史を伝え、バトンを引き継ぐことが私の使命です」

 ■ボルネオ島で祖父戦死 

 荒堀修一さん、風化防ぐため「知恵絞る」

 兵庫県遺族会の副会長で青年部長の荒堀修一さん(61)=尼崎市。母方の祖父清市さんが1945(昭和20)年4月10日、ボルネオ島で戦死したが、祖父がどんな状況で亡くなったのか、当時何歳だったのかは知らない。

 「祖母は生前、戦中や戦争直後の話をしたがらなかった」と荒堀さん。唯一話してくれたのは、祖父が召集され戦地へたつ際、陸軍の基地でフェンス越しに最後のあいさつをしたこと。その話しぶりから「すごく心残りだった」ことは感じた。祖母は戦後、4人の娘を1人で育て上げた。

 建設会社勤務の荒堀さんは約6年前、旧海軍の鶉野飛行場跡(加西市)での仕事を担当した縁で、同飛行場から飛び立った特攻隊員の遺書をまとめる作業に関わった。自身の経験も踏まえ「戦争の記憶を風化させてはいけない」との危機感からだった。2016年に発足した県遺族会青年部の活動にも当初から参加。「戦争の遺品をどう保管し記録として残していけるか、知恵を絞りたい」と話す。

 式典参列後、「しみじみと平和の尊さを感じた」と話し、ウクライナ情勢に触れて「平和は簡単に壊れてしまう。平和は当たり前じゃない」と力を込めた。

 ■曾祖父の輸送船に魚雷

 松尾恭樹さん「歴史の教訓つなぐ」

 8月15日生まれの会社員松尾恭樹さん(26)=神戸市須磨区=にとって誕生日はいつの頃からか、戦死した曽祖父、安國又成さんに思いをはせる日となった。初めて参列した式典でも曽祖父を思って手を合わせ、「例年以上に平和の尊さを感じ、忘れられない誕生日になりました」と語った。

 小学生の頃、曽祖母の節子さん宅に飾られた白黒写真に写る、穏やかな表情の青年が「戦争で死んだひいじい」と教わった。節子さんから「何日も食べる物がなく、飢えが一番しんどかった」などの体験談も聞き、「教科書でしか知らなかった戦争が急に身近になった」と振り返る。

 又成さんは1944(昭和19)年、輸送船「玉津丸」でフィリピンへ向かう途中、米潜水艦の魚雷を受け32歳で帰らぬ人となった。生まれた娘に会うことなく、遠く離れた海で散った「ひいじい」。松尾さんは遺影を眺めるたび「どんな人だったんだろう」と思いを巡らせてきた。

 終戦の日にひ孫が生まれたことを「運命的」と喜んだ節子さんも2018年、97歳で亡くなった。「戦争は絶対にあかん」。震えた声が忘れられない。

 全国戦没者追悼式には過去、松尾さんの妹3人が参列。「平和を考えるきっかけになった」と口をそろえる様子を見て「いつか自分も」と願ってきた。日本で総人口の8割超が戦後生まれとなる中、世界ではロシアによるウクライナ侵攻が続く。「戦争の体験談を聞いた自分たちの世代が、歴史の教訓をつないでいかないと」

戦後77年
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