6434人が亡くなった阪神・淡路大震災から、27年がたとうとしている。この長い年月を経てなお、行方不明のままの被災者が3人いることをご存じだろうか。遺体はもちろん、遺骨も見つかっていない。兵庫県加古川市の佐藤悦子さん(58)の母、正子さん=当時(65)=もその1人だ。神戸市須磨区で被災した。「ひょっとして、どこかで生きているのでは」。整理のつかない喪失感を抱えながら、母を捜し続ける悦子さん。彼女の歳月をたどり、悲しみとの向き合い方について考えたい。(論説委員・小林由佳)
1995年1月17日、悦子さんが小学生の娘2人と暮らす加古川市の自宅もかなり揺れた。すぐに母が1人で住む神戸の実家に電話をしたが、応答がない。やがて呼び出し音も鳴らなくなる。それでも「お母ちゃんは近くに避難しているやろう」と思っていた。
翌朝、神戸市内に住む兄が訪ねてきた。「おふくろ来てるか」と問われ、「いるわけないやん」と笑うと、兄の表情がさっと変わった。「あほか! 家ないねんぞ」。実家の大田町の木造2階建てアパートは全壊し、近所で発生した火事で焼けたと知らされた。
20日未明、悦子さんは知人のバイクに乗せてもらって神戸に入る。実家の周囲は停電で真っ暗な上、住宅が倒れ、電線がぶら下がっている。近くの須磨警察署で明るくなるのを待ち、アパートの場所にたどり着くと、自衛隊員が掘り起こしを始めるところだった。
「1階のこの辺りに母が住んでいたんです」と駆け寄り、捜索を見守る。母のベッドが金属の枠だけになって出てきた。愛用の腕時計、傘、小物入れに年賀状も。熱で一部が溶けた洗濯機の中には、見覚えのある服が入ったままだ。
同じアパートの住民の男性が遺体で見つかり、死因は圧死と聞かされた。母も圧死したところへ、火が回ったのだろうか。
捜索は約2カ月間で計6回に及んだ。敷地を丁寧に掘り返し、兄と一緒に白っぽいものを拾ってはふるいにかける。だが、骨のかけらすら確認できない。「骨は残るもんやけどなぁ。須磨の七不思議と言うか…」。捜索に加わった警察官が首をひねった。
◇
父の昭夫さんが離婚届を置いて家を出たのは、震災の前年のことだ。以来、正子さんは1人で暮らした。若いころから働きづめで、震災前日も近所の生花店に出勤していた。がれきの中から、通勤に使っていた自転車が出てきたことを考えると、やはり自宅で被災した可能性が高い。
もしかしたら、母は記憶喪失になっているのかもしれない。そう思った悦子さんは避難所や病院、高齢者施設を回った。知人が写真入りのちらしを作り、あちこちに張ってくれた。
「須磨の海岸でぼろぼろの袋を持ったおばさんを見かけた」「『パンをください』と店に来た女性がいる」。ちらしを見た人から電話が入ると、仕事を休んで駆けつけた。どれも真実味を持って響いた。
阪神・淡路の行方不明者は一時、1071人に上った。それも2月初旬には1桁になる。3月半ばを過ぎたころ、兵庫県警須磨署から思わぬ連絡が入る。「あなたのお母さんにはもう1人娘がいて、群馬県に住んでいることが分かった」。悦子さんより12歳年上という。初めて聞く話だった。
【連載】
(中)「会えなかった」姉と悔し涙
(下)今も心にいるのに…
<識者インタビュー>龍谷大学短期大学部 黒川雅代子教授に聞く
【特集ページ】阪神・淡路大震災
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