母が見つからないのは私のせいだ-。
兵庫県加古川市の佐藤悦子さん(58)は、阪神・淡路大震災で行方不明になった母正子さん=当時(65)=を捜すうち、自分を責めるようになる。震災から2年が過ぎ、うつ病と診断された。
仕事を辞め、小学生の娘2人の食事を作るので精いっぱい。ある日、長女が「目がかゆい」と言いだした。結膜炎だった。掃除に手が回らず、家の中はほこりだらけ。目をこする娘にはっとする。「このままでは子どもらを犠牲にしてしまう」
27歳で離婚し、1人で娘を育ててきた。新しい仕事を探さなければ。くじけそうな気持ちを奮い立たせた。
そのうち、地震で全壊した神戸市須磨区の実家跡に、新しい家が建った。もう母の手がかりを探せない。
悦子さんは思う。母は既にこの世にいないだろう。でも、自分は遺族になりきれない。母がどのように亡くなったかが分かれば、せめて遺体や遺骨が見つかれば、死を受け入れられるかもしれない…。
震災から10年が過ぎるころには、たまに夢に出てきた母が現れなくなった。
◇
2011年3月11日、東日本大震災が起きる。行方不明者数は一時1万5千人を超えた。
ボランティアとして捜索を手伝いたい。悦子さんは被災地に行くことを考えた。肉親を捜す人の気持ちは痛いほど分かる。だが、目の前の仕事や生活に追われ、実現できなかった。
災害や事件の行方不明者が何年もたってから遺体で見つかったというニュースに接すると、須磨警察署に駆け込みたい衝動にかられる。「もう1回、お母ちゃんを捜して」と。
いくら年月が過ぎても、「節目」など訪れない。悦子さんは、中ぶらりんな気持ちをどう表現していいか分からなかった。
3年ほど前のことだ。「あいまいな喪失」という考え方に出合った。米国の心理療法家ポーリン・ボス博士が提唱し、ケアの現場で使われている。家族が行方不明であるなど、気持ちの整理が付かない状態を「あいまいな喪失」と名付け、苦しみの原因としていったん棚上げし、客観視することが大切という。
その一つのタイプが「さよならのない別れ」。心の中には存在するが、現実にはいない状態を指す。
以来、悦子さんは母への思いを尋ねられると「さよならのない別れです」と答えている。
娘2人は独立し、孫もできた。母にとってはひ孫。見せてやりたかった。群馬県に暮らす姉、齊藤礼子さん(70)とはメールで近況を知らせ合う。「お姉さん」と呼べるのがうれしい。
周囲にも阪神・淡路を知らない人が増えた。だからこそ、母のように今も行方不明のままの人がいることを知ってほしい、家族を捜して喪失感を抱える自分のような存在を知ってほしい、と願う。
神戸・東遊園地のモニュメントに母の名を刻んだ銘板がある。お墓の代わり。花と手紙を携えて、今年も1月17日に会いに行く。
【連載】
(上)遺体も遺骨も見つからず
(中)「会えなかった」姉と悔し涙
<識者インタビュー>龍谷大学短期大学部 黒川雅代子教授に聞く
【特集ページ】阪神・淡路大震災
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