笑顔が並ぶアルバムを見ながら、つぶやいた。「自分の中の半分はあの時に止まって、残り半分で今を生きているんです」。神戸市の会社員羽中(はねなか)健二さん(59)は阪神・淡路大震災で34歳の妻と5歳の長女を失った。あれから間もなく27年。生き残った一人息子は社会人になり、自身もついに定年を迎える。亡くなった2人に節目を伝える。「悲しみは今も変わらないけれど、何とかやってるよ」(村上貴浩)
市内で長男の敬登(けいと)さん(27)と2人暮らし。今も週末の墓参りは欠かさない。数千枚もある家族のスナップ写真はいつでも取り出せる場所に置いてある。
大学を卒業してすぐ、友人を介して知り合った2歳年上の妻・幸恵さんと結婚した。料理が上手でさばさばとした明るい性格を「フィーリングが合うんですね」と話す。健二さんが27歳のときに愛梨ちゃんを授かった。
震災前年の1994年2月、妻の実家に近い西宮市甲東園に一戸建てを借り、大阪から移った直後、31歳で敬登さんが生まれる。「4人になって家族らしくなるね。これからだね」。妻がうれしそうに話したのを昨日のことのように思い出す。
その夏、4歳になった愛梨ちゃんと須磨海岸へ。「海に入りたい」とねだられ、日に焼けた砂浜をだっこして走って水辺に下ろすと「こんなに冷たいんだ!」とはしゃいだ。しかし、「次は水着を持ってこよう」との約束は果たせなくなる。
◇ ◇
震災前日、愛梨ちゃんは大好きなセーラームーンの塗り絵に夢中だった。「もう寝ようか」と言うと「お休み終わってほしくないなあ」とこぼして寝床についた。
普段から健二さんは未明に起きて仕事をするため、2階で寝ていた。妻と子どもたちは1階にいる。「電気、消そうか?」「私が消しとくよ」。それが妻との最後の会話になった。
数時間後の1月17日午前5時46分。巨大な揺れで1階部分がつぶれた。
がれきの下から、間もなく1歳になる息子の泣き声だけが聞こえた。必死に掘り起こすと、幸恵さんは2人の子どもを守るように両脇に抱きかかえ、愛梨ちゃんと共に息絶えていた。
◇ ◇
神戸の両親宅に住み、休日には必ず出掛けて幼い息子の写真を撮った。動物園、公園、海辺で…。ご飯を食べたり、立っているだけだったりの姿もある。
もともとカメラが好きだったが「気が狂ったように撮っていた」。いつしか、妻と娘の写真を超える枚数になっていた。
それをしなくなったのは、敬登さんが小学生になってからだ。「ぽっかりとあいた心の穴が、息子との会話で埋まっていった」。野球に夢中になり、勉強が苦手で心配したが、希望の高校にも合格できた。
敬登さんの大学受験の後、両親が相次いで亡くなり、ついに家族は2人だけになった。それでも学校や仕事のことを話し合ったり、旅行に出掛けたり、二人三脚で暮らす中で、こうも思えるようになった。
「この日常も悪くないなって。妻と娘との思い出も震災の悲しみも、その後の苦労も全部ひっくるめて、今を生きている」
敬登さんは3年前に就職し、日々忙しそうだ。幸恵さん、愛梨ちゃんのことはほとんど記憶にないが、いずれ結婚し、親になるときに2人のことをたどっていってほしいと思っている。
健二さんは今年8月に60歳を迎えて定年になる。その後の生活は考えている最中だが、「区切りの年」と考えたら、妻から叱られた気がした。
「『まだまだ、あなたもこれからでしょ』って」
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