■15年で整備2件、「残土は野放し」
JR宝塚駅から北西へ2キロ、兵庫県西宮市北部の花の峯地区。阪神間の市街地越しに大阪湾が見渡せる高台の斜面は、コンクリート製の擁壁で固められていた。
その風景は、阪神・淡路大震災で地滑りが起きた同市仁川百合野町の盛り土の現状に似ている。花の峯も盛り土で谷を埋めた造成地だ。震度6以上の地震が発生した場合、盛り土が崩れ、16区画で家屋が倒壊するなどの危険性が2013年、市の調査で判明した。
地下水を排出する機能を備えた擁壁は18年、新潟県中越地震(04年)被災地の盛り土崩落被害を受けて国が進める「宅地耐震化推進事業」で整備された。16区画の一つに暮らす70代男性は「盛り土とは知らなかった。不安は完全には消えないが、工事で少し安心できた」と話す。
だが、全国の盛り土で事前崩落対策が完了したのは、15年間で花の峯を含めてたった2件。調査すら完了していない自治体が大半で、危険な盛り土が見つかっても、工費の一部は住民負担が想定される。
花の峯では16区画の住人が計3千万円近くを負担する可能性があったが、市道が含まれる上、仁川百合野町の災害なども考慮され、「政治的な判断」として市が住民分を負担した。男性は「住民負担となれば、事業はできていなかったでしょうね」と振り返る。
◆
静岡県熱海市の盛り土崩落による土石流災害では、建設残土を含む土砂が届け出よりはるかに多く盛られ、被害が拡大した可能性がある。
京都大学防災研究所の釜井俊孝教授は「行き場を失った残土が山に向かい、新たな公害が生じた」と警鐘を鳴らす。建設残土はかつて神戸・ポートアイランドなどの人工島や臨海部の埋め立てに使われたが、近年は需要が激減したという。
兵庫県では昨年12月、是正を必要とする危険な盛り土が7カ所で判明した。熱海より小規模ながら、許可された量より多い土砂を入れたケースもあった。神戸市では、下流域の集落や住宅への危険をはらんだ盛り土があったという。
「行政の監視にも限界がある。残土は野放し状態だ」と、兵庫県内のある自治体職員は打ち明けた。残土自体の処分を直接規制する法律がなく、罰則の軽さやコスト面から不適切に処理されやすいという。
◆
熱海土石流災害の被災者太田滋さん(65)は、賠償を求める裁判の目的を「お金ではない。責任を明らかにし、二度と犠牲を繰り返さないため」と説明する。
教訓を引き継ごうという思いは仁川百合野町も同じだ。地元の「ゆりの会」は17日午前5時46分、慰霊碑で犠牲者を悼む。さらに、地滑りが起きた斜面に植えたシバザクラの手入れに約80人が関わり、春には紫色の花を咲かせる。
地域には新しい住民も増えた。追悼行事で初めて地滑りがあったことを知る人もいる。同会代表の大野七郎さん(76)は熱海の災害を重ね合わせ、活動を続ける意味をこう語った。
「土砂で亡くなる人はもう見たくないんです」
(藤井伸哉、堀内達成)=おわり=
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(3)責任の所在
(2)危険潜む造成法
(1)熱海土石流
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