■「人災」追及に「想定外」の壁
阪神・淡路大震災で甲山浄水場(当時)の盛り土が崩れ、34人の命が奪われた西宮市仁川百合野町。大阪市立大学の三田村宗樹教授(地質学)が調査のために現地入りしたのは、発生約10日後だった。
災害が起きる以前から、地質調査で現場近くの甲山をよく訪れており、一帯の地形に詳しかった。崩れたのは、浄水場下にある平均傾斜20度未満の緩やかな雑木林。丘陵地の締め固まった地層ならば、地滑りは起こりにくい。なぜもっと急な、別の斜面が崩れなかったかが疑問だった。
崩落の起点や、滑らなかった斜面との境界を観察すると、崩落した土砂は粘土や砂が混在していた。「盛り土だ」と直感した。土砂にのみ込まれなかった住宅の壁には泥しぶきがこびりついていたことから、「盛り土の内部に相当量の地下水があった」と分析した。
地下水がたまりやすい谷埋め盛り土は、排水が機能しなければ元の地盤との境で地滑りを起こす危険がぐっと高まる。京都大学防災研究所の釜井俊孝教授は「排水設備に不備があったのでは。人災の可能性も否定できない」と指摘する。
◆
盛り土を造成したのは、阪神水道企業団(神戸市)だった。同居の両親と姉の3人を亡くし、自身も足に重傷を負った中島敬夫さん(66)=兵庫県稲美町=は「犠牲者のためにも責任を追及する」と、損害賠償を求める道を探った。
だが、ハードルは高かった。被災者支援に奔走した兵庫県弁護士会の津久井進会長(52)は「当時は不可抗力や想定外という言葉に社会的な同調があった」と語る。その言葉通り、遺族が国家賠償を求めた阪神高速倒壊訴訟などでも阪神高速道路公団(当時)の過失は認められなかった。
中島さんは約半年後、裁判を断念した。企業団は道義的な責任は認めつつ「法律的な問題はなかった」との姿勢を今も崩さない。地滑りが起きたメカニズムの説明さえなく、当時は不信感を募らせたが、今は「もう企業団を許した」と言う。
◆
責任追及への思いは、昨年7月に静岡県熱海市で起きた大規模土石流災害の被災者太田滋さん(65)も強く抱く。
県によると、起点で崩れた盛り土は届け出の計画を超える最大約50メートルまで積み上げられ、適切な排水設備や安全対策が取られていなかった疑いがある。盛り土の造成地は、木くずを埋めるなどの問題行為を繰り返し、再三にわたり行政指導を受けていた。
「明らかに人災だ」
太田さんは昨年9月、盛り土造成地の所有者らを相手取り、他の被災者と損害賠償を求める訴訟を起こした。遺族の一部は静岡県警に所有者らを刑事告訴し、強制捜査が始まっている。
盛り土の起点近くに立ち、下方の被災地に目をやった太田さん。「土地所有者、造成業者、行政の誰かが一人でもきちんとしてくれていれば犠牲者は出なかった」と憤った。(藤井伸哉、堀内達成)
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(2)危険潜む造成法
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