■排水に不備「遅れてきた公害」
1995年1月17日早朝、阪神・淡路大震災。関西学院大学西宮上ケ原キャンパス(西宮市)の北西に広がる仁川百合野町に暮らしていた大野七郎さん(76)は烈震に目覚めた。家のあちこちが破損したものの、外に出ると、住民らが浄水場下に向かっていた。
地域の西側には雑木林の斜面をへだてて阪神水道企業団の甲山浄水場(当時)があった。「火が出ている」と聞き、消火器を持って救助に駆け付けると、子どものころによく遊んだ雑木林は既になかった。
雑木林の下にあった民家は2階まで全て土砂に埋まり、地面から炎が噴き出していた。大野さんは恐怖に立ちすくんだ。翌日も救助に当たったが、土砂は深く、掘り出すことすら難しかった。
地滑りを起こしたのは、阪神水道企業団が55年に浄水場を造成した時の盛り土だった。仁川町6を含めた13戸が、10万立方メートルとされる土砂にのみ込まれ、34人の命が奪われた。
大野さんは「見た目は雑木林で、盛り土だったとは知らなかった。自然の脅威とはいえ、土砂が恨めしかった」と振り返る。
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仁川百合野町に土砂被害をもたらした斜面は谷埋め盛り土と呼ばれる。高度経済成長期以降の爆発的な住宅需要を支えた造成法だ。
この盛り土による地滑りを「遅れてきた公害」と名付け、災害リスクに警鐘を鳴らす防災学者がいる。私たちは京都大学防災研究所(京都府宇治市)に釜井俊孝教授(応用地質学)を訪ねた。「盛り土は危険なのか」という問いに、釜井教授は断言した。
「排水設備などの管理が行き届いていない盛り土は危ない」
一般的に、盛り土は元の地盤に比べて弱いとされる。さらに、周囲より低い場所を造成する谷埋め盛り土は、地下に水が流れ込んでたまりやすい。釜井教授は「排水が滞ったり、土砂をせき止める擁壁がなかったりすれば、地滑りが起こりやすくなる」と指摘する。
仁川百合野町では地震で盛り土が揺れ、熱海では豪雨で水量が増えた結果、水圧が高まり、地盤と盛り土の境界線で地滑りが起きたとみられる。釜井教授は「引き金が違っただけでメカニズムは同じ」と話した。
◆
谷埋め盛り土は1960年代以降、住宅需要の急増とともに多用された。山麓の尾根を削り、その土砂で谷を埋めた住宅地が全国各地に増える一方、警鐘とすべき被害も出ていた。
釜井教授によると、68年の十勝沖地震では青森県の中学校で校庭が崩落し、4人が死亡。78年の宮城県沖地震でも死者が出た。だが、これらが大きく顧みられることはなかった。
いずれも排水設備設置などの災害対策を義務付けた宅地造成等規制法(61年制定)などより前の盛り土だったとして、「古い問題」とされたためだ。仁川百合野町の盛り土も古い造成地だった。
だが、仁川百合野町の被害を「人災」と指摘する声は被災直後からあった。(藤井伸哉、堀内達成)
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