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火災で溶けた硬貨
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火災で溶けた硬貨

 色彩は失われ、にび色の塊と化していた。中には部分的に残った500円玉や100円玉も。遺骨が見つかった焼け跡にあった。

 塊を拾ったのは西口加代子さん(72)=神戸市長田区。辺りは白くけぶり、足の裏に熱さを感じたことを忘れられない。

 義母に当たる夫久吉さんの母と、伯母になるその姉は、同市兵庫区の2階建て木造アパートに住んでいた。地震直後、西口さんは駆け付けた。倒壊した建物の中から義母を引きずり出して避難所に運び、再び戻ると火の海だった。

 2日後、自衛隊から連絡を受け、西口さんは伯母の遺骨を受け取った。炊飯ジャーに入っていた。「ほかに」と焼け跡を捜し、溶けた硬貨の塊を見つけた。

 「伯母は陶器の貯金箱に500円をためてました。それが跡形もなくて。熱かったやろなと思ったら、涙が止まりませんでした」

 伯母は義母とともに新潟県生まれで、西口さんは愛知県出身。郷里を離れる心境を理解してくれる人だった。料理が上手で、正月には郷土料理の「のっぺ汁」を振る舞ってくれた。

 「あの日のことは鮮明に覚えてる。まだ、頭ぼけてへんよ」(鈴木雅之)

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 震災の教訓を伝える人と防災未来センターが今春、開設20年を迎える。あの日の記憶を収蔵庫で見詰めた。

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