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かつて神戸市職員労働組合などが入っていた通称「組合棟」(手前)。背後に市役所がそびえる=神戸市中央区
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かつて神戸市職員労働組合などが入っていた通称「組合棟」(手前)。背後に市役所がそびえる=神戸市中央区

 神戸市長選(10日告示、24日投開票の予定)が迫る。40年以上続いた市役所出身の市長から転換し、2期8年に及ぶ久元市政は、150万人都市に何をもたらしたのか。神戸が抱える課題から検証する。(長谷部崇)

     ◆

■労組と決別、上意下達に傾斜

 6月下旬。3選を目指し、神戸市長選に立候補を表明した市長久元喜造(67)は、積み残した課題を聞かれ、こう応じた。

 「それは市役所改革だ。(庁内は)まだ世間の常識とかなりずれがある」

 久元の2期目は、表向き都心・三宮などの再整備を進めた一方、市組織にはびこる慣習の見直しに踏み切った4年でもあった。

 発端となったのが、2018年に発覚した市職員労働組合の役員らによる「ヤミ専従」。勤務実態のない役員が給与を受けながら組合活動に従事し、市も黙認するなど、ゆがんだ労使関係が明るみに出た。

 インターネットの投稿で知った久元らは、第三者委員会での調査を決定。「亡霊が市役所の中を徘徊(はいかい)している」と表現した。総務省が08年当時、全国の自治体にヤミ専従の調査を依頼した際、市は「存在しない」としていたからだ。

 最終的に、過去最多の103人を停職などの懲戒処分にした。脱退者が相次いだ労組の求心力は以前よりも低下。労働条件以外の労使交渉は廃止された。

 「市役所育ちでない人間がメスを入れて、職員が付いてきてくれるか。相当悩んだ」。振り返る久元の言葉には、労組との決別を決めた苦悩がにじむ。

     ◇

 「市職員出身の市長だったら、組合との癒着は続いていたはずだ」。市内部では、久元が外部の総務省出身だから、改革ができたと見る向きが強い。

 それは、市政運営に対する労組の影響力によるところが大きい。市では職員の配置や施策まで、労組に意見を求めることが常態化していた。

 久元まで4代約50年にわたり、助役や副市長経験者が労組の推薦を受け、トップに就く構図が続く。久元以外は市役所生え抜きで、「市長すら労組に逆らえず、温床はつくられ、癒着やご都合主義が定着した」とベテラン市議は指摘する。

 また、市は阪神・淡路大震災の復旧・復興で膨らんだ借金で財政難となり、人件費カットのため職員約7千人を削減。労組の協力は不可欠で、庁内で影響力を強める結果を招いた。

 ヤミ専従発覚の翌年、外郭団体でも労組役員への不正支給が明らかに。高度成長期、市は次々と団体を設立し、「株式会社神戸市」の最前線として職員を出向させ、稼ぎ方を学ばせた。

 久元はこうした慣習を「負の遺産」とし、一掃する必要性を主張。今年8月以降、31ある団体の統廃合も視野に改革に着手した。

     ◇

 市の閉鎖的な組織風土を感じ取った久元は、初当選後の就任早々、長期にわたり同じポストに就く幹部らの異動を発表。風穴をあけるため、外部人材の登用を加速させてきた。

 起業家支援を担う「イノベーション専門官」や、業務効率化で働き方改革を推進する「デジタル化専門官」など、民間から57人を登用。その多さは政令市の中でも際立つ。

 かつて、外部からの介入を極端に嫌い、中央から出向を受けない「純血主義」とされた排他的体質は影を潜めたが、外部登用の効果は未知数だ。

 効率化やスピードを求め、外部目線でタブーとされた改革を強力に進める久元に、幹部職員は危うさを感じる。「不向きとみれば幹部の異動も容赦ない。市長は職員に『市民目線』を求めるが、今は上を向いて仕事をする職員が増えた」

 職員の主体性をいかに育むか。トップの姿勢にかかっている。

=敬称略=

=おわり=

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