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神戸市が子育て支援で各区役所に整備を進める「おやこふらっとひろば」=9月、神戸市兵庫区
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神戸市が子育て支援で各区役所に整備を進める「おやこふらっとひろば」=9月、神戸市兵庫区

 神戸市長選(10日告示、24日投開票の予定)が迫る。40年以上続いた市役所出身の市長から転換し、2期8年に及ぶ久元市政は、150万人都市に何をもたらしたのか。神戸が抱える課題から検証する。

     ◆

■子育て支援拡充成果見えず

 「明石と競っているつもりは全くない」

 今年2月。新年度の予算発表で、子育て支援策の充実について説明していた神戸市長久元喜造(67)が、語気を強めた。隣接する明石市と過熱する施策競争を否定したが、意識しているのは明らかだった。

 久元が市長に就いた2013年以降、子育て世帯に手厚い支援策は年々増加。「若者に選ばれる街」を掲げ、人口減少に歯止めをかける切り札としてきた。

 子育て施策に投入した予算額を見ても、前市長矢田立郎(81)の任期最後の13年度は852億円だったが、21年度は1・5倍以上の1295億円に膨らみ、力の入れようは明らかだ。

 だが人口は、久元市政の2期8年で年々減り続け、目に見える成果は出ていない。少子化に加え、市内から他市に流出も多く、明石が県内では最多(20年)。子育て世代とされる25~39歳で462人、0~9歳で166人の転出超過だった。

 それでも久元は意に介さず、批判をはねつけた。「神戸の子育て世帯が(施策を理由に)大挙して明石に転居しているデータは、どこにもない」

     ◇

 久元は反論するが、神戸の人口減とは対照的に、明石の人口は近年、増え続けている。

 同市では11年に泉房穂(58)が市長に就任すると、高校生まで医療費無料や、第2子以降の保育料無料など踏み込んだ支援策を打ち出した。持ち前の発信力で、神戸市民らに明石の住みよさをアピール。人口は、ちょうど久元が就任した13年から8年間で約7800人増え、昨年初めて30万人都市に仲間入りした。

 一方、危機感を抱いた神戸市は、泉の露骨な対抗姿勢も受けて、反転攻勢に出る。「保育料の第2子半額、第3子以降は無償」「高校生までの医療費助成」など、膨大な財源が必要な制度を相次いで採り入れた。

 「明石対策と言われても否定できない」。施策を充実しても結果につながらない状況に、神戸市幹部は焦りを見せる。ただ結果的に、競い合った施策は、政令市ではトップレベルになっていた。

     ◇

 少子高齢化の中、子育て支援の充実が過熱する一方、長く続いてきた高齢者施策の見直しが進む。

 「決して高齢者を軽視していない」と久元は否定するが、高齢者の増加で予算は膨らみ、限られた財源で維持することが難しくなっている。

 その一つが、高齢者が地域のバスや地下鉄を安く利用できる「敬老パス」。市は「福祉元年」とされた1973年に導入した。

 当初の利用者は4万人程度だったが、18年度には約24万人に達し、予算は母子世帯や障害者の「福祉パス」と合わせて約50億円に。近年は見込みを超える利用があり、昨秋、利用者の自己負担増に踏み切った。

 これには、利用者から「高齢者に冷たい」と批判が相次いだ。しかし、大阪、京都市など他の政令市でも同様の見直しが進み、多くの自治体が制度の維持に大なたを振るう。

 子育て支援に比べ、久元市政では高齢者向けの新たな施策は目立たず、市職員もそれを認める。新たなものに手を付けず、現行の財源を何とか確保したいとの意図が透ける。

 厳しい財政事情の中で、高齢者施策と子育て支援は、パイを奪い合わないといけないのか-。充実させた子育て環境を武器に人口を呼び込み、税収増につなげる戦略が問われている。=敬称略=

(初鹿野俊)

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