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魅力ある街を目指して、再整備が進む都心・三宮=9月、神戸市中央区
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魅力ある街を目指して、再整備が進む都心・三宮=9月、神戸市中央区

 神戸市長選(10日告示、24日投開票の予定)が迫る。40年以上続いた市役所出身の市長から転換し、2期8年に及ぶ久元市政は、150万人都市に何をもたらしたのか。神戸が抱える課題から検証する。

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■巨額投資コロナ禍でも堅持

 神戸・三宮で今春、高さ120メートルの新たなランドマーク「神戸三宮阪急ビル」が開業した。地上29階地下3階建てで、阪急の駅ビルも兼ね、飲食店やオフィス、ホテルが入る。

 「新しい三宮の姿が、目に見える形で現れてきた」。市長久元喜造(67)が就任時、公約として掲げた都心・三宮の再整備が初めて形となった瞬間だった。神戸の玄関口にふさわしい街づくりは、久元市政の「一丁目一番地」。その成否が街の将来を左右するといえる。

 今年、大きく動きだした再整備は、駅前からウオーターフロントにかけての一帯に及ぶ。西日本最大級のバスターミナル整備や市役所2号館の建て替え、東遊園地の再整備など、30年後の完了に向けて続々とプロジェクトが始まる。

 市の推計で総事業費は、民間による整備も含めて7440億円。最後の大規模開発となった神戸空港(空港島の造成を含む)の2倍を優に超え、このうち市は1570億円を投じる。

 一方、商業施設やオフィス、ホテル誘致の波及効果は1兆1千億円と試算、7万6千人の雇用創出を見込む。「整備完了後は年間90億円の税収増になる」とするが、楽観はできない。

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 大風呂敷を広げた三宮再整備は、高度成長期に「株式会社神戸市」として名をはせた市長宮崎辰雄の開発行政をほうふつとさせる。

 市は「山、海へ行く」を合言葉に、山を削って海を埋め立て、人工島を造成。採石地にはニュータウンを造り、海と山に挟まれ、市街地が狭い不利な条件を克服した。

 市役所生え抜きの宮崎は、安易に国に頼らず、市が自ら投資して稼ぐ手法を根付かせ、その都市経営は自治体のモデルとなった。

 だが市財政はその後、阪神・淡路大震災で危機を迎える。震災の復旧・復興で市の一般会計の借金は1兆8千億円に膨らんだ。特別、企業会計も含めた1年間の予算に匹敵する。

 震災から6年後、市長に就いた矢田立郎(81)は、12年に及ぶ行財政改革を貫徹。職員約5400人を減らすなどし、何とか約5千億円の借金を削減した。

 しかし、政令市で5位を維持してきた人口は、福岡と川崎市に抜かれ、7位に転落。長年、大規模投資を抑えた反動は、街の魅力の衰えを突き付けた。

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 震災から18年が過ぎた2013年、市財政はようやく投資ができる体力に。余裕ができた市政を矢田から引き継いだ久元は、公約の三宮再整備を実行すべく、再開発にかじを切った。

 「震災によるまちづくりの遅れをスピード感をもって取り戻す」。昨年2月に発表した20年度の予算案には、三宮だけでなく、市北西部の駅周辺の再整備に向けて、この20年で最多の投資費を盛り込んだ。だが、アクセルを踏み込もうとした矢先、新型コロナウイルスの感染が広がった。

 久元は、かつて市の土台となった行政主導の開発とは違い、民間投資の呼び込みや国補助の活用で市負担の圧縮を試みる。ただ、コロナ禍では対策費がかさみ、財源確保のため、市役所新庁舎での音楽専用ホール建設は断念を余儀なくされた。

 先月、市議会で野党から三宮再整備の見直しを迫られた久元は「神戸の発展に不可欠な事業だ」と反論。一方で、財政悪化を解決する手だては示さなかった。

 巨額投資の堅持には、庁内からも不安の声が漏れ始めた。「財政のバランスを失えば、取り返しがつかなくなる」=敬称略=

(三島大一郎)

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