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自己流の指の運び方で電卓をさばき、簿記を解く浜部希輝さん=神戸市垂水区星陵台4
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自己流の指の運び方で電卓をさばき、簿記を解く浜部希輝さん=神戸市垂水区星陵台4
昨年夏の全国大会では個人で準優勝を果たし、団体3位入賞にも貢献した浜部さん=神戸市垂水区星陵台4
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昨年夏の全国大会では個人で準優勝を果たし、団体3位入賞にも貢献した浜部さん=神戸市垂水区星陵台4

 簿記に魅せられ、朝から晩まで「簿記漬け」の高校生活を送った神戸商業高校(神戸市垂水区星陵台4)会計科3年の浜部希輝(きき)さん(18)が卒業する。右手にペン、左手で電卓を操り、ひたすら簿記と向き合った3年間。早さと正確さが求められる世界で親指、薬指、小指だけを使った電卓のたたき方を極めた。なぜなら生まれながら両手の人さし指と中指を持たないからだ。

 浜部さんは先天性の「裂手裂足症」で、両手両足の指の一部を持たずに生まれた。ちゃんと歩けるか、箸は持てるかと親は案じたが、その心配もなんのその。日常生活を難なくこなした。母親のさやかさん(39)は「親が勝手に心配していただけで、娘にとっては(指がないことが)当たり前。しっかりと育ってくれた」と目を細める。

 推理マンガ好きで育った希輝さんが簿記を志すきっかけは小学6年生の頃だった。さやかさんが高校時代に簿記に打ち込んだ話を聞いた。「なんとなく楽しそうで、幼心に『お母さんを超えたい』と誓った」と希輝さん。

 負けず嫌いな性格は母親譲り。選んだ高校、学科、部活の簿記部も母と一緒だった。専門の教材がそろう「簿記室」に通い詰め、検定や大会に向けて努力を重ねた。問題を解く思考や発想に加え、独自の電卓の使い方も編み出した。

 縦5列に並ぶキーのそれぞれに5本の指をあてがうのが一般的だが、希輝さんはできない。そこで配列の左下で多用する「0」は小指ではじき、中央部の数字は主に薬指、四則計算を担う親指も臨機応変に使い分けた。「1秒を争う大会では電卓そのものを見ないことが大事」と希輝さん。指先から伝わる感覚を頼りに淡々と打ち込んでいく。

 簿記部顧問の武貞朱美教諭(51)は「ハンディキャップを乗り越えて、簿記の技術を見事に習得した」とたたえる。

 昨年夏には東京で開かれた「第38回全国高校簿記競技大会」に兵庫県代表として団体、個人の両部門に出場。団体は3位入賞に貢献、希輝さん自身も個人で準優勝を果たした。個人は兵庫勢では過去最高だった。

 28日に卒業し和歌山大経済学部に進む。目指すは経営コンサルタント。初めての1人暮らしに不安もあるが、「大学でも簿記は続けますよ。次は6月の検定に向けて全力です」と依然、情熱をほとばしらせていた。

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