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只見高校の友情応援として甲子園のアルプス席で演奏した東灘、神戸鈴蘭台高の生徒=3月、甲子園球場(東灘高校提供)
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只見高校の友情応援として甲子園のアルプス席で演奏した東灘、神戸鈴蘭台高の生徒=3月、甲子園球場(東灘高校提供)

 兵庫県西宮市の甲子園球場であった今春の第94回選抜高校野球大会で、東灘高校(神戸市東灘区)は、21世紀枠で初出場の福島県立只見高を友情応援した。只見は初戦で敗れたが、吹奏楽部がない同高のために演奏を届けた東灘の生徒は、すがすがしいプレーに「励まされた」と感謝する。一方で「また一緒に甲子園にいけたら」と願う東灘の生徒。アルプス席に「忘れ物」があるからだ。(井上太郎)

 只見高は1学年約30人の小規模校で、野球部員は13人。新潟県に隣接する豪雪地帯にあり、3月でも1メートル以上の積雪でグラウンドは使えない。只見町の人口は約4千人。地元関係者だけでは大勢の応援を見込みにくいことから、被災地ボランティアで福島県と縁がある東灘など神戸の複数高校が友情応援を担った。

 只見は大会4日目(3月22日)に大垣日大(岐阜県)との1回戦に臨んだ。雨の影響で大幅にずれ、試合開始は午後6時を回った。

 東灘高生は教職員らとともに、只見のチームカラー緑のジャンパー姿で一塁側のアルプス席を埋めた。

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 新型コロナウイルスの影響で球場での生演奏経験はなかった東灘の吹奏楽部員。「序盤は曲を間違えることもあった」と部長の中田奈歩さん(17)は振り返った。

 打順が一回りし、音が合い始めた四回、試合が動いた。2点を追う只見は2死一、三塁のチャンス。打席に5番の山内友斗捕手が入った。反撃への期待で演奏のボリュームは増した。

 応えるように山内捕手が鋭くはじき返した打球はライト前へ。スコアボードに待望の「1」が刻まれた。

 中田さんたちは高らかにヒットファンファーレを奏でた。緑の大応援団が揺れ、アルプス席に春が訪れたようだった。その後、打線は相手のエースに封じ込まれ、1ー6で敗れた。

 東灘の吹奏楽部員は只見ナインの全力疾走を欠かさないプレーをたたえた。でも一つ、心残りがあった。

 山内捕手がヒットを放った時のこと。ヒットファンファーレの後、すぐ試合の流れに合わせ、次打者の応援曲に切り替えた。そのため得点時用に準備した曲を一度も演奏できなかった。

 ゲーム「サクラ大戦」の主題歌で、本人の希望を基に選んだ選手別の13曲と同じように、懸命に準備してきた。「難しい分しっかり練習したので、余計に後悔してしまって」と副部長の豊川瑞菜さん(17)。

 あの時、走者がホームを踏んでから次打者への投球まで約30秒。真っ先にサクラ大戦を選ぶべきだったかもしれない。でも、チーム初安打の場面。ヒットファンファーレを奏でたことも間違っていない。演奏に乗ってアルプス席は沸いた。

 豊川さんは「臨機応変な演奏を磨きたい」と前を向きつつ「もう一度、応援がかなうなら演奏したい」。次は得点を祝い、押せ押せムードを演出する。今夏、只見ナインが雪辱に戻ってきたら、アルプス席に「忘れ物」を取りに行こうと考えている。

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