エッセー・評論

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 わたしの父は体にちょっとした問題があって、衛生兵として従軍した。そして戦後、多くの元「兵隊さん」がそうであったように、戦場の情景について、家族にも沈黙を守りとおした。わたしが何を訊(き)いても、父はいつも話を逸(そ)らした。でも、はぐらかされたとは思わなかった。ただ、よそで聴くともなく聴いていた、戦後生まれのわたしが知るよしもない戦争の話と、過去ではなく今日あったことを低い声でとりとめもなく話す父の姿との落差を、いつもちょっとだけ不思議に思っていた。でも、亡き父(たち)のその沈黙の意味にはずっとひっかかるものがあった。そして、それをずっと訊きそびれているうち、父は逝ってしまった。

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2014/7/26
 

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