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(7)街づくりに高齢者対策 新都心を福祉モデル都市に
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 神戸市は二十二日、東部新都心につくる特別養護老人ホーム(特養)の運営法人公募を締め切った。「選考のポイントは熱意と資金計画」と神戸市施設福祉課。学識経験者らの選考委員会で、六月中には決めるという。

 東部新都心は、神戸市中央区東部から神戸市灘区西部の臨海部約百二十ヘクタール。復興住宅一万戸のほか、WHO神戸センターやボランティア活動支援センターなど保健・医療・福祉の拠点を目指し、特養は二カ所に建設する。

 須磨、西神ニュータウン、ポートアイランドなど、同市は多くの新都市を手掛けてきた。だが、街づくりの計画段階から特養を組み込むのは初めての試みだ。

 「福祉サービスの拠点と住宅を近接させ、高齢者ら住民のニーズにこたえたい」と市の担当者は言う。

 二カ所のうち一カ所は、社会福祉法人「博由社」(兵庫県明石市)の運営に決まっている。住宅と特養との合築方式で、九階建ての地下一階・二階に施設が入る。住宅には高齢者向けシルバーハウジングを約百戸設け、安否確認や緊急時の対応も博由社が担当する。

 高齢者介護支援センターを併設、ショートステイやデイサービス、各種の相談など在宅福祉サービスも総合的に進める考えだ。

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 神戸市では、特養は郊外に点在する形で整備が進んできた。用地確保のたやすさが最大の原因だった。現在、神戸市内にある特養二十七カ所のうち、西、北区は各九カ所。七割近くが両区に集中している。

 「高齢者が慣れ親しんだ地域を離れて施設に入ることは、過去の生活を断ち切ることを意味する。居住地の近くに施設がバランス良くあるのが望ましい」と、長田ケアホーム施設長の中辻直行さん。

 市開発指導要綱にも、街づくり開発に高齢者対策を位置づける考えはなかった。小・中学校や保育所、児童館は「住区に一カ所」などと定めているが、高齢者向け施設の具体的な記載はない。実際に、当初から特養の設置を計画した例はないという。

 ようやく市が市街地での積極的な特養設置を盛り込んだのは、九二年に策定した福祉総合計画。「土地確保」の問題をクリアするため、住宅などとの合築を推進、用地の無償貸与を促進策とした。

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 東部新都心での特養のオープンは二年後の九八年春。博由社本部長の松本哲夫さんは「住民の要望にこたえる在宅福祉の態勢を整えたい」と、今からホームヘルパーの養成に乗り出すことを考えている。人材養成から登録、派遣までトータルに行い、質の高いサービスを目指すという。

 従来のニュータウンは、住宅購入が可能な三、四十代などをターゲットにし、高齢者施設は先の問題だった。しかし、高齢化の進展は、施設の必要性を浮き彫りにした。

 「きちっと整備された街に、後から施設をつくるのは難しい。中学校区に一つ整備するデイサービスセンターの用地もめどが立ちにくい」。大阪・千里ニュータウンでの対策を模索する豊中市長寿社会施策推進室は悩みを打ち明ける。

 「二十一世紀の高齢社会に対応したモデル都市づくり」。兵庫県は東部新都心をこう表現する。復興住宅も単身向けから世帯向けまで「多様な世代」を前提にする。震災復興で具体化した新しい手法は、従来型の街づくりへの問題提起である。

1996/5/26
 

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