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共生の大地へ 没後1年・内橋克人の歩いた道

(7)周縁の条理 もう一つの日本は可能だ

2022.09.16
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保存された渚滑線のレールと標識。内橋さんは地域再生に挑戦する住民たちの姿を追った(北海道滝上町提供)

保存された渚滑線のレールと標識。内橋さんは地域再生に挑戦する住民たちの姿を追った(北海道滝上町提供)

 北海道の北東の端、オホーツク海沿岸から渚滑川(しょこつがわ)に沿って奥に入る。滝上町(たきのうえちょう)。ここにかつてあった駅を保存した記念館がある。小さな駅舎、線路、駅名標識…。赤字ローカル線廃止対象として鉄路が消えてから約10年後の1994(平成6)年、内橋克人さんが取材に訪れた。

 鉄道を失った町は自立の道を選んだ。平成の大合併に抗(あらが)い、芝桜の名所として人を集め、赤い三角屋根の建物を配して「童話村」をテーマにまちづくりに取り組んだ。「都へと繋(つな)ぐ心の絆を失った同じ境遇の過疎地、中山間地、僻(へき)地、また地場産業を訪ね、荒い時代の風に立ち向かう人びとの悲嘆と勇気、逞(たくま)しい想像力、健気(けなげ)な日常の物語を紡いだ」。日本経済新聞で連載された「共生の大地」は注目を集め、岩波新書になった。滝上町のルポを収録した章を「『辺境と周縁』の条理」と名づけ、扉に廃線駅の写真を載せた。

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