六甲台遠望
<六甲台遠望(7)神戸大・橋野知子教授>一期一会の意味 オンラインと対面を超えて
10月最初の週末、久しぶりに対面のワークショップが六甲台で開かれた。テーマは、これからの経済学研究にかかわる内容で、約二十数名の英知を結集して来年出版しようとしている本だ。各章の執筆者たちの報告、コメンテーターによる意見、コメントを受けて報告者によるリプライ(返答)、そして全体討論というセッションが、2日間にわたって繰り広げられた。参加者と編集者の周到な準備もあって、大変中身の濃いものとなった。私もなんとか1章分を書き上げて報告し、中身の改定のための有益なコメントや批判を受けた。誠に実り多い会議となり、しばらく余韻に浸った。
こういう対面の研究会は何年ぶりだろう、と会議室のあとかたづけをしながらふと思った。新型コロナの感染拡大で、講義も小規模のワークショップも、学会の全国大会もオンラインが当たり前となった。2020年5月には、社会経済史学会という経済史分野の伝統ある学会の全国大会が神戸大学で開催予定だった。開催の可否を3月中に決めなければならず、その時にはオンライン学会のノウハウどころか、オンラインのツールもほとんど普及しておらず、翌年に開催することになった。対面開催を期待していたが、結局、翌年にオンラインで学会が開かれた。
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