ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(26)変えるという選択、変えないという選択
最近よく聞く言葉に、「何かが起こった時にしか変われない」というものがありますね。たとえば、学校の9月入学や、マイナンバーカードの整備などです。マイナンバーカードについては、これまで、さまざまな面で便利だけれど、個人情報の保護の観点から導入には慎重に、という議論がありました。コロナ渦の状況下で、給付金を早く渡すために便利ということでしょうか、議論があまりなされないまま積極的に導入する方向に動いているようです。従来から懸案となっていることがらについて、「今しか変えることができない」という声が高まる中で、「変えるべきではない」と発言することは、もしかすると批判の対象になってしまうのかもしれません。しかし、あえて指摘したいのは、賛否のある問題のいくつかについては、「変えない」という選択をすることも有りだということです。
私は、大人だけではなく、中学生や高校生を対象にした音楽の指導もしています。彼らの指導で大切なことは、直接面と向かって触れ合うことです。これは、従来からずっと、教育の基本だと言われていることです。テクニックやノウハウについてはリモートでも伝えることができますが、音楽にとって最も大切な「何を表現したいのか」の表現を指導することは、遠隔では不可能です。新型コロナの影響でしょう、ふれあいの大切さから一転して、子どもを育てるのにリモートでも大丈夫だ、という意見がよく聞かれるようになったように感じます。音楽の場合に限って言えば、直接発している音を聞いたり、息遣いを感じたりすることなしに、音楽教育はあり得ません。そうは言っても、今はコロナ渦で、さまざまな制約が課せられる時期ですから、非常に厳しい状況です。
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