ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(25)「それを考えるのがあなたの役割でしょう」
オーケストラという集団の指揮を担っていると、直接間接にさまざまな意見を聞きます。その多くは、前向きな指摘や意見ですが、一部には批判もあります。批判の中にこそ、集団をより良い方向に導くヒントがあることはもちろんですが、皆さんの周囲には、「批判すること自体が目的の批判」が潜んでいることはないでしょうか。そこからは何も生産的な未来は生まれません。
かつて、私が関わっていたオーケストラが、存続の危機に陥ったことがありました。その当時は、演奏者など楽団の内部からも「批判のための批判」が多く表面化しました。とにかく何をやっても批判するという姿勢の人たちです。運営がうまくいっている時には、それらは水面下に潜んでいるのでしょう。ひどい時には、言葉の揚げ足をとって、議論の中心から外れたところで批判を展開して、鬼の首を取ったかのような勢いです。代替案の提示を求めると、「それを考えるのがあなたの役割でしょう」という返事で、実際のところは代替案などもっていないのです。その通り、それを考えるのが運営に携わっている者や指揮者の役割です。しかし、批判ばかりされていたのでは、議論の意味がないのも事実です。それならいっそのこと、すべてを任せてもらいたいと、つい思ってしまいます。
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