ひょうご経済プラスTOP 連載一覧 コラム けいざいeyes ビジネスマン必読! 指揮者の組織論 (23)精一杯に、一生懸命に(その2~期待されるということ)

ビジネスマン必読! 指揮者の組織論

(23)精一杯に、一生懸命に(その2~期待されるということ)

2020.02.19
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 つい先日、私が顧問を務めていた高校の吹奏楽部の同窓会がありました。10年ぶりに逢う教え子たちは、皆驚くほど立派になっていました。中には再会に泣き出す教え子もいて、心が温まる時間を過ごしました。吹奏楽は集団の活動ですから、たとえばコンクールで多くの団体が外で集合する機会も多くあります。ですから、きちんとした吹奏楽部の生徒は、周囲の迷惑にならないように行動するように躾けられています。先日の同窓会で、2次会の場所に移動する際、教え子たちは長い2列縦隊になって歩いていて、思わず笑ってしまいました。

 私が音楽を指導する際にいつも心がけているのは、生徒を「ひとり」にしないことです。人は皆、「誰かに必要とされたい」と思うものです。いてもいなくてもよい人など一人もいないのですが、時には「自分は必要とされていないのではないか」と感じることがあります。実は、私自身がそういう経験をもっており、自ら人を避けておきながら、一方では「必要とされたい」、「期待されたい」と思っていた時期がありました。人が生きていく上で一番きついのは、おそらく「無視されること」です。「自分は必要とされていないのではないか」と感じることも、同じ感情かもしれません。ですから、ひとりでもそのような感情を持つことがないようにするのが、顧問である私の役割だと思っています。再会に涙した教え子も、「大丈夫といって受け入れてもらった」、「自分の存在に自信を持たせてもらった」と話してくれました。よい音楽を追求するばかりではなく、こうした人間関係を構築することも、高校の部活動教育の大切な柱です。

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