ひょうご経済プラスTOP 連載一覧 コラム けいざいeyes ビジネスマン必読! 指揮者の組織論 (21)謝ることができない人の孤独

ビジネスマン必読! 指揮者の組織論

(21)謝ることができない人の孤独

2019.12.04
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 よくオーケストラのメンバーに、こんなことを言われます。「指揮者って大変ですね」…その通り!そう言ってもらえるだけでも御の字です。しかし、そういうメンバーも、指揮者について理解しているかといえば、実はそうでもないのです。客演指揮者について、「あの指揮者とはどうもやりにくい」などと言っているのを聞くと、自分はどう思われているのか気になったりします。そこで、演奏者に必要以上に気をつかって、言いたいことがあっても遠慮してしまうような姿勢になる指揮者もいます。もちろん、このような指揮者は、二度とそのオーケストラには呼ばれることはありません。かといって、演奏者に対して傲慢な態度で接すると、演奏者の気持ちが次第に離れてしまって、指揮者の理想の音楽どころではなくなってしまいます。指揮者の立ち位置は、とても微妙なバランスの上にあるのです。

 自らが理想とする音楽を作る喜びは格別ですが、そのためにはたいへんな個人的努力と、オーケストラという演奏者集団をドライブする力(優れた指導力)、それから、ひとりの人間として尊敬される人間性が求められます。ひとりで指揮譜を読み込む個人的努力はたやすいのですが、演奏者と協調し、演奏者からの尊敬を得て、「この指揮者についていこう」とか、「彼の考える音楽を再現しようじゃないか」と思ってもらえるための努力のほうが難しいかもしれません。指揮者は、音楽的知性も人間性も、すべてをさらけ出して音楽に向き合うのです。

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