ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(15)豊かな知識と経験をもつ人を活かすためには
指揮者でも演奏者でも、スーパースターと呼ばれる人は、なんでも簡単に表現できてしまいます。私の指揮の師匠は、見た目も格好良く、演奏者にとっても求められている音楽がわかりやすい指揮をしますし、知り合いの多くの演奏者は、難しい指使いの部分でもすらすらと演奏するのです。もちろん、見えないところで努力や苦労を重ねているのだろうと思います。
ところで、音楽家でなくても、自分で何でもできてしまう人って、「どうしてそんな簡単なことができないの?」と思ってしまいやすいものです。その人自身の努力と経験によって、「知らない間に」身についてきた能力は、本人も気づかないことが多いと思います。私自身、人並みに努力もしたし苦労もしたつもりですが、そのおかげである程度の能力が身についているという自負があります。一方で、自負が自信過剰にならないように、常に自分を客観的に見つめなおして軌道修正する、自制の意識も大切にしたいと思っています。スーパープレイヤーが身につけた能力は、自身の無意識のうちのもの、つまり「いつのまにか」身についた能力ですから、特別なものだという自覚がほとんどありません。そこで、周囲の人もできるものだと勝手に決めつけてしまいやすいようです。そして、うまくできない人を見ると、「どうしてできないの?」となってしまいやすい。
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