ひょうご経済プラスTOP 連載一覧 コラム けいざいeyes 投資のプロが斬る!これでいいのか日本経済 (9)ディレンマ

投資のプロが斬る!これでいいのか日本経済

(9)ディレンマ

2018.09.19
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 どちらに行っても正解は無く、どちらとも決めかねる状態をディレンマという。恐らく今、世界が注目しているディレンマの中で、最大級のものが中国のそれであろう。前回のコラムにも書いたが、近年、中国の覇権主義的活動が米国の許容範囲を越え、いよいよ貿易摩擦という名の経済紛争を端緒とした、覇権抗争が勃発したのである。決して、単なる貿易摩擦ではないことを認識しておかなければならない。

 現時点では、まだ中国は強気の構えである。米国の制裁関税に対し、同規模の関税による報復を行なっている。しかし、米国の対中輸入額である5000億ドル強に対し、中国の対米輸入額は1300億ドル強に過ぎない。制裁関税の対象品目においても、その金額においても米国有利は否めない。従って、中国は、最大の効果が期待できる米中間選挙の予備選挙に合わせて、その地域の特産品、例えば農産品への報復関税を発表し、トランプ氏率いる共和党の支持率を下げようと試みた。だが実施されたトランプ減税や未だリップサービスではあるものの大型財投への期待から、好調の続く米経済は、共和党の支持率を下げさせてはいない。報復関税による影響が、じりじりと米国の消費者物価を上昇させ、米国民の不興を買うことを期待する中国ではあるが、トランプ氏は景気てこ入れという対抗手段を持っているのである。また、次の一手として予想されている、在中米国企業へのボイコット運動などは、経済紛争をますますエスカレートさせ、過剰債務、過剰設備に苦しみながらも、それでもまた財投を増加させざるを得ない経済状態にある中国には、逆に致命傷となることが考えられる。つまり、中国に勝ち目はないと筆者は考えている。

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