投資のプロが斬る!これでいいのか日本経済
(6)似て非なるもの
世の中には、似て非なるものが数多く存在している。筆者には、日を追って強く感じることがあるのだが、その多くは中国関係の事案である。例えば、米中間の貿易摩擦問題への中国政府の対応である。トランプ大統領の出現により、その具体的交渉案件が露骨にテーブルに並べられ、貿易戦争の懸念まで喧伝されている。自国第一主義を表明し、貿易不均衡の解消を主張する米国に対して、中国はグローバルな自由貿易体制の重要性とその維持を主張し、同調できる理解者として日本や欧州連合(EU)へも協力を求めている。また、先日は李克強首相の初来日を実現させて、共通の利益や対米共闘をアピールしようと試みている。言うまでもなく、我が国にとってグローバルな自由貿易体制の崩壊は死活問題であるが、果して中国は本当に自由貿易体制の重要性や意義を世界に語れるのであろうか。
近年、世界の工場として、その生産能力を誇ってきた中国であるが、その生産力が商品の種類によっては昨今過剰となっている。粗鋼生産が最たる例であるが、年間世界生産量の約17億トンに対し、その約半分の8億トン以上を生産している。この他にもセメントなど多くの商品が生産過剰であると思われるが、計画経済の中国では、経済政策の失敗は許されないし、表面化することはない。そこで、過剰生産物の輸出と自国のプレゼンス拡大を狙って、共産党政府が発案したのが、一帯一路政策であろうと筆者は想定している。もちろん一帯一路構想は、経済政策であるだけではなく、軍事・思想までをも包含した覇権主義構想そのものであることは想像に難くない。
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