ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(8)挑戦する人を大切にする社会へ
最近よく耳にするのが「若者が挑戦しなくなった」という言葉です。若者に言わせると、「挑戦できるような環境を作ってくれないじゃないか」ということのようです。協力もせずに手放しで、「どんどん自分の能力を発揮して挑戦すればいい」というベテランの考えはどうかと思いますし、一方若者が、お膳立てをしなければ挑戦しないというのはいかがなものかとも思えます。私の身近には、先輩の目や批判されることが気になって新しいことに挑戦できないという人もいますし、自らは動かずにふんぞり返っているベテランもいます。これでは、誰も得をしません。
著名なプロの指揮者でも、駆け出しの頃には大きな失敗を何度も経験しています。練習の計画をうまく立てられなくて時間切れになり、本番で演奏が止まってしまったとか、演奏者との間での意思の疎通がうまくいかなくて信頼を失い、もう二度と来るなと言われてしまったとかいう話はいくらでもあります。音楽大学を卒業すれば、プロの指揮者になれるわけではありません。ところが、そう勘違いしている若者が多くおり、「自分の才能を認めてくれない」と言うのです。大指揮者は、現場での経験が若者を一人前の指揮者にしていくことをよくわかっていて、ベテランになっても、毎日が勉強だと言ってさまざまな挑戦をしています。挑戦しない指揮者の作り出す音楽を聴くと、訴えかけるものに欠けていると感じられるでしょう。年齢や経験年数に関係なく、常に切磋琢磨し、互いの挑戦を認め合う集団だからこそ、音楽界は聴き手にとって素晴らしいものであり続けられるのだと思います。
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