ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(7)意見がまとまらない集団に所属しています
ときどき、オーケストラの運営についての会議で、意見がまとまらずに困る、という場面に出くわします。指揮者は音楽上の絶対的な立場にあるので、このような会議には出席しないか、出席してもオブザーバーという立場です。意見がまとまらないのは、それぞれのメンバーの考えていることが違うためです。ある者は強い口調で主張して「偉そうに」と非難され、ある者は年上のメンバーに気を遣って発言できずに忸怩たる思いでいたりします。一応会議で方向性を決めても、その後あちこちで(陰に隠れて)苦情が噴出する、などということもあります。ベテランに従うべきか、口調の強いメンバーに従うべきか、自分の考えはもはやどうでもよくなって、若いメンバーは、ただ場の雰囲気を読みながら行動しようとするかもしれません。さて、もしも「あなた」がそのような集団の中にいるとすると、あなたならどう行動するでしょうか?あなたも集団を構成している一員であり、外から眺めて評論している立場ではないと想像しながら考えてみてください。
このような問題は、おそらく「会議」というものに対する考え方がメンバーによって異なっていることにあると思います。日本のオーケストラと海外のオーケストラの議論のしかたを比べてみると、海外のオーケストラは自身の立場から意見をはっきりと主張をする傾向が強く、一方日本のオーケストラでは相手の立場を斟酌しながら発言することが多いように思います。はっきりと主張すると、自己中心的だと非難されるのではないかという思いが先に立つかもしれませんが、わたしは、議論をして決定していくプロセスにおいては、相手の立場を考慮して自分の思っている意見を変えたり譲ったりするのではなく、まずそれぞれの立場の主張を明確にすべきだと思っています。そうしないと、あとから「本当は反対だったのに」ということになってしまって、結論が出た後にモヤモヤした思いが残ってしまいます。これがたまっていくと、組織としてよい結果を生みません。まずははっきりと主張し、次に相手の意見にしっかりと耳を傾けて議論し、組織としてより良い方向の結論を生み出すことが大切です。この議論で、折れるところは折れ、譲るところは譲り、主張するところは主張するのです。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。