ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(5)自立した人間関係の雰囲気をつくる
毎年夏に吹奏楽コンクールが開催され、地区大会、都道府県大会、支部大会(関西大会など)と勝ち進んで、全国大会での金賞を目指します。コンクールの地区大会では、周囲の迷惑に気づかずに騒いでいる姿や、他の団体がミスするとクスクス笑う姿を目にすることがあります。一方、全国大会では、周囲に気を配った言動で、他の団体の演奏者に「お互い頑張ろう」と声を掛け合う姿が一般的です。周囲への気配りができるということは、自分たちにプライドがあるということです。指揮者に指示されたとおりに演奏する団体には、このようなプライドは生まれません。集団に属していることにプライドがもてるようにするためには、集団の中での役割と集団の一部であることの意味を、演奏者ひとりひとりがきちんと認識して、集団としてよい雰囲気を作り出す必要があります。
オーケストラ全体に、演奏会でよい演奏をしようという雰囲気があれば、仮に乗り気でない演奏者がいても、全体の雰囲気につられて頑張ることができます。逆に、自分一人が張り切っていても、オーケストラ全体の雰囲気がだらけていたりすると、自分だけでも良い演奏をしようと思い続けることはもはや不可能でしょう。オーケストラの雰囲気を作るのは、オーケストラを構成する演奏者ひとりひとりです。すぐれたオーケストラはそのことをわかっていて、演奏の良し悪しを他者のせいにはしません。たとえ指揮者との相性が良くなくても、自分たちの演奏がうまくいかないことを、指揮者の責任にはしないのです。一方、指揮者は、演奏の出来にすべての責任を持つ覚悟で指揮台に上ります。そういう、互いに自立した関係こそが、プロフェッショナルな関係だと思います。
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