ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(4)個性をいかす必然性
演奏者の個性を大切にすると、オーケストラはばらばらになってしまうのではないか、という質問を受けることがあります。あちこちに小さな集団ができたり、一匹狼のような演奏者がいたりして、とてもオーケストラ全体が調和のとれた音楽を演奏することなどできなくなるのではないか、というわけです。結論から言うと、機能的で調和のとれた集団にまとめるためには、指揮者が明確な目標を設定した上で、演奏者ひとりひとりに自己主張させることが大切です。個性を自由に主張させず、規律で同じ方向を向かせるようにすると、演奏に活力がなくなったり、指示待ち演奏者を多く生み出すことになったりして、結果として聴衆を感動させるような演奏から遠ざかってしまうのです。
オーケストラは、そもそも表現することが仕事なので、オーケストラの演奏者は、当然目指す音楽について強く自己主張します。一流のオーケストラは、演奏者全員が演奏について考えたことを主張しあい、よりよい演奏に向かおうと議論します。指揮者の指示をいちいち待っているようでは、自主性のないオーケストラといわれてしまいます。まず初めに、指揮者がどのような音楽を作りたいのかという目標を明確にしておけば、それぞれが自分の個性をどのように発揮することが目標の達成につながるのかを考えるようになります。演奏者には自己主張する場が与えられているので、抑圧された意識は持たないと思います。
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