ひょうご経済プラスTOP 連載一覧 コラム けいざいeyes ビジネスマン必読! 指揮者の組織論 (3)個性をいかす必然性

ビジネスマン必読! 指揮者の組織論

(3)個性をいかす必然性

2018.02.21
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 オーケストラの演奏者は、往々にして個性的です。たとえば、反応が遅い演奏者もいて、指示をしてもなかなか伝わらずにイライラすることもあります。こんなとき、注意していないと、演奏者を「自分のいうことをきく存在」であるべきだと勘違いして、自分の「思い通り」にならない演奏者に対して、感情的になったり高圧的になったりしやすいものです。指揮者にとって「都合のよい演奏者」では、聴き手にとって生き生きとした音楽は作れません。そして、どんな演奏者であっても、高圧的に指示することによっては何も得られないばかりか、一度失った信頼は、簡単には取り戻すことはできないものです。いろいろな個性をもった音があるからこそ、オーケストラ全体も個性豊かに響くのです。

 個性を大切にすることと、規律を維持した社会集団の運営とは相反するもののように思われがちですが、そうではありません。明確な共通の目標を設定すれば、ひとりひとりの個性を活かす場が必ずあります。プロフェッショナルなオーケストラは、自分たちの個性の強みをきちんと理解していて、また、そのアピールの仕方をよく心得ています。ロシアのオーケストラは力強く重厚な響きが圧倒的で、チャイコフスキーなどのお国ものを演奏すると、まさに音楽の個性に「はまった」印象を受けます。しかし、同じ響きでモーツァルトを演奏したりすると違和感を覚えるでしょうし、実際にそのようなことはしません。一方、ワールドワイドな響きをもつオーケストラの演奏では、もっと個性的な響きがほしいと思うでしょう。オーケストラ自身の個性を保ちつつ、指揮者によって色がつけられ、さらに作曲家や作品の作曲年代によっても色を変えていくのです。

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