ビジネスマン必読! 指揮者の組織論
(1)わたしは何に向いていますか?
わたしは高等学校の教師をしていますが、高校生や卒業した教え子の大学生が相談に乗ってほしいとしょっちゅうやってきます。相談の内容はきまって、自分がどんな職業に向いているのかわからない、というものです。こんなふうに思い悩むのも若者ならではのことなのでしょうが、結局、適当に何かの理由を作って、ある企業の入社試験を受ける学生は少なくありません。しかし、考えてみると、わたしも、自分が教師や指揮者に向いているかどうかを見極めてから進路を決めたわけではありませんでした。特に指揮者という仕事は、特別な資格が必要なわけではなく、指揮者になるための試験があるわけでもありません。だからこそ、指揮者としてやっていくのは難しいともいえます。指揮者になりたい、という強い思いで努力を重ねる人は、品格を備えた音楽家らしい音楽家に成長していき、周囲から指揮者として認められるようになります。それを達成するための行程(どのようにして)が定まらなければ目標を設定できないのではなく、行程は目標を設定してから考えるものです。
わたしが学生の頃、ある指揮のセミナーでオーケストラを指揮するチャンスがありました。「だれか指揮してみませんか?」と聞かれたとき、「はい!」と手を挙げたのは多くの学生の中でわたしだけでした。ほかの学生は、「今はいいです、また次の機会に」と消極的でした。わたしは幸運にも指揮を体験することができ、その経験がその後の指揮活動の大きな財産となりました。ほかの学生には、おそらくもう二度とそんな機会は訪れなかったでしょう。指揮者として成功する人は、結果を求めず、機会を逃さず捕らえて努力する人だと思います。そして、そういう人が結果的に、指揮者に向いていた、ということになるのです。
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