神戸を舞台にした映画について書いてきましたが、今回でひとくぎりです。ここで私の好きな神戸の映画のオールタイム・ベストワンを告白しますと、それは1981年公開の大森一樹監督のATG映画「風の歌を聴け」です。ちょうど40年前の今ごろ、寒い日の初日に一番乗りに観(み)ました。
というのもデビューして2年余りの、まだ多くの人に知られていなかった村上春樹の原作を、表紙の佐々木マキのイラストに誘われて読んでいたので、いったい全体これをどうやって劇映画にするのか興味津々だったのです。しかもこのコラムですでにとりあげた「花の降る午後」の大森一樹監督は当時からとても好きな映画作家でしたから、その関心もいや増すばかりで初日を指折り待っていたのでした。
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