これまで神戸を舞台にした映画のことを書いてきましたが、今回に限ってはテレビドラマに寄り道したいと思います。それというのも、これからふれる「マザー」という1970年8月に放映されたNHKのテレビドラマは、神戸の人と風景をぞんぶんに「主役」として撮りまくった作品であるからです。
作者はNHKの鬼才ディレクターとして知られた佐々木昭一郎。テレビドラマというよりは「映像詩」といった形容のほうがしっくりくる1時間弱の単発作品で、ひとりの幼い少年が神戸の街なかで出会うさまざまな人びとと即興的に語らいながら、喪失した「母」のイメージを探ってゆくという異色の構成です。
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