卒業式のシーズン。暖かい陽光が降り注ぎ、日差しは春分に向けて長くなる。朝晩の寒暖差は体に少し堪(こた)えるものの、気持ちが上向きになる日も多い。と同時に、何か物悲しい、せつない気分になるのは、なぜだろう。それはおそらく、3月が節目の季節であるからだ。
「悲喜こもごも」のように、矛盾する感情が胸に生じることを、心理学では混合感情(ミクスト・エモーション)と呼ぶ。喜びのなかに悲しさがあったり、悲しみのなかに喜びがあったり、それらを同時に感じる、少し複雑な気持ちのことである。不安と期待、苦しみと達成感、心の痛みと感動、といった組み合わせもあるだろう。ただし、葛藤が強いわけではない。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。