数カ月前、『香山哲のプロジェクト発酵記』という本を書いた。「これから始まる漫画連載を、僕が計画する様子」を、図や文章が混ざった形式で記録した本だった。しかし、漫画などの創作に関係なく、多種多様な背景を持った人から反響をいただけている。それは、主題の1つを「いかに自分の寿命を大切に扱い、自分から遠ざけるべきことから意欲や時間を守るか」というものにしたからかもしれない。
人生の中で計画する「プロジェクト」には色々なものがある。仕事、旅行、進学先選び、趣味探し、人付き合い。それらについて考えたり、工夫したり、整えたりしながら後悔がないように進める。だが、今日の人々が生活している環境は、「私の欲望を予測できる広告システムが、私向けの広告を提示して欲望を作り出す」ようなことが当たり前な世の中だ。そんな中で、本当に自分がしたいことは何なのか、何を選んで何に囲まれてどんな景色の中を生きていくのか、考えるのはなかなか大変だ。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。