日本からドイツに移住して、もうすぐ5年だ。僕はベルリンという街で、漫画や文章やゲームなどを作って過ごしている。移住の理由を尋ねられると、「自分にとってよりよい環境を作るため」だと答えることが多い。どんな人たちに囲まれて、どんな制度や常識の中で、どう作られた物を食べて過ごすのか。日々の生活は環境から作られ、その生活が土台となって仕事や活動がある。日本国内の色(いろ)んな環境で生活や制作を続けているうちに、より根本的な変化を試してみようと思ったのだった。
僕にとって、人間の世の中はどこも疲れる。多すぎる広告から「お金をより稼いでより使え」という圧力を感じたり、容姿や能力の競争意識が高い雰囲気など、苦手なものが多い。たとえ何かから逃げるために移住しても、そこでまた別の嫌さと直面する。
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