私は現在、神戸市混声合唱団の音楽監督を務めているが、同時に慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団の常任指揮者でもある。慶應ワグネルは1901年に革新的作曲家ワーグナーの名を冠し創設され、120年余り活動を続ける学生音楽団体であり、かつては木下保氏や畑中良輔氏という、日本を代表する声楽家が指揮、指導にあたってきた。
慶應ワグネルと私の最初の接点は、藝大の学生だった頃に遡(さかのぼ)る。当時私は声楽科の学生だったが、高校時代に合唱コンクール全国大会でピアノを弾いた経験を買われ、演奏旅行のピアニストとして抜擢(ばってき)されたのだ。以来ピアニストとしてワグネルとの関係は続いたが、今度は指揮をして欲しいと依頼を受け(1995年)、それからは指揮者として指導を続ける。
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