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 高校1年の夏休み、祖母に美術大学に行きたいと相談した。両親に却下されたため味方が欲しかったのだ。祖母は、かつて神戸の南画家、水越松南の画塾に通う弟子であった。私に南画の手ほどきをしてくれた。そして、いつも私に絵は人生を豊かにすると言っていた。ところが、進路については恐ろしい形相で「松南先生に絵の楽しみを学んだが、画業とやらの恐ろしさも教わった」と言った。その鬼の形相に面食らい、美大への進学を諦めた。

 松南は岡本太郎などの現代美術家に混じり1953年のサンパウロ・ビエンナーレに唯一洋画家以外で参加するなど日本画界の異端児であった。私は幼いころ、一度だけ本人を見た。90代だったが、相当ハイカラな紳士でベレー帽をかぶり、蝶(ちょう)ネクタイをつけてこちらを睨(にら)みつけていた。そのいでたちは子ども心に寄席に登場する奇術師のように感じられた。

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2021/8/3
 

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