渡仏して10年ほどたったころ、専門である美術に辟易(へきえき)していた。本来であれば、美術は社会の外側から疑問を投げかけたり、想定外の発想で我々を仰天させたり、現実と折り合いをつけて生きている我々に夢を与えてくれるはず。ところが、美術も他のビジネスさながら「市場」に手玉に取られているではないか。
芸術家も、夢を売る奇人というよりはマーケティングやプレゼン能力、助成金申請書類の作成能力を要求される。また、ある地域の文化を測るのに、美術館の有無や数で判断するのも偏向している。
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