ドイツはエンジンとモーターの国だ。世界初の電気モーターもガソリンエンジンもドイツで生まれ、今でもドイツ人開発者の名を持つエンジンがある。その一つがディーゼルエンジンだ。開発者ルドルフ・ディーゼル(1858~1913年)は、天才エンジニアにしてカリスマ的存在だった。
彼は少年時代をパリやロンドンで過ごし、ドイツのアウグスブルクなどで学んだ。学生時代から並外れた創造性を発揮するだけでなく、人の心をつかむことに長(た)けていた。それ故、困難な時期には必ず彼のプロジェクトの支援者が現れた。彼はよく困難にも直面した。発明家としては天才だったが、いかんせん実務に弱かった。銀行や取引先との交渉などは極めて苦手で、彼の持つ多数の特許の煩雑な手続きには苦労した。そのため生涯を通じて常に財政的、法的な問題と格闘し続けた。だから、最後には自殺したなどとうわさされるのだろう。
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