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(2)ボランティア 活動発展へ壁は資金難
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NPO法人のミニデイケアで昼食を楽しむお年寄りら=神戸市東灘区御影本町6、東灘地域助け合いネットワーク
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NPO法人のミニデイケアで昼食を楽しむお年寄りら=神戸市東灘区御影本町6、東灘地域助け合いネットワーク

NPO法人のミニデイケアで昼食を楽しむお年寄りら=神戸市東灘区御影本町6、東灘地域助け合いネットワーク

NPO法人のミニデイケアで昼食を楽しむお年寄りら=神戸市東灘区御影本町6、東灘地域助け合いネットワーク

 平日の昼下がり。神戸市のNPO法人「東灘地域助け合いネットワーク」にボランティアとして登録する河村大輔さん(62)は、高齢夫婦のマンションを訪ねた。「ベッドを日当たりのよい部屋に移してほしい」と依頼を受けたからだ。

 2時間ほどで作業を終え「本当にありがとうございました」と感謝する夫婦に、照れたように笑顔を返した。定年退職後、ボランティアを始めた河村さんにとって「ありがとうの一言は、目に見えない報酬」だ。

 同ネットワークが2003年から始めた「日常生活支援事業」は、地域の高齢者や障害者らから「困っていること」を受け付け、ボランティアを派遣する。利用料は1時間1200円。河村さんら約50人のボランティアには事前に「地域で生かしたい特技」を登録してもらっている。

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 高齢者の自立を助ける「ミニデイケア」=写真=なども開く同ネットワークはもともと、阪神・淡路大震災の直後、緊急支援などに取り組むボランティア団体として出発した。街が日常を取り戻す中、被災地では「震災ボランティアの役割はもう終わった」との声も聞かれたが、理事長の村山メイ子さん(55)が聞くお年寄りらの声は違った。

 「前なら一人でできたことが難しくなってねえ」「部屋に閉じこもる時間も増えたし…」。村山さんは「助け合いの精神は、これからこそ必要」と感じた。

 地域の中で、できる人が、できることをして支え合う-。日常生活支援は地域に根付き、利用者数は05年の280人から、08年には1600人にまで増えた。

 こうした市民の活動は大震災を機に注目され、1998年には特定非営利活動促進法(NPO法)が制定された。ボランティア団体も団体名義で財産を所有したり、契約を結んだりできるようになり、行政や企業と並ぶ「新たな社会の担い手」ともいわれた。

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 ただ、課題もある。当初から指摘された資金難は、今も解決されていない。NPO法人を支える会員数の減少も深刻さを増す。

 同じく大震災を教訓に結成された西宮市の「日本災害救援ボランティアネットワーク」は、災害時に専門家を被災地に派遣し、平常時は子ども向けの防災教育などを手掛ける。兵庫県で初めてNPO法人の認証を受けた草分け的存在だ。

 しかし、一時600人を数えた会員数は今、250人。行政の委託や自主事業にも力を入れるが、年間収入は1000万円とピーク時から6割減った。人件費に回せる約400万円を4人のスタッフで分け合う。「会員数を増やすには、活動をアピールし、理解してもらう必要がある。しかし、余裕がなくなると、新規事業を企画するのもためらってしまう」と常務理事の寺本弘伸さん(47)。

 資金難だけが理由ではないが、NPO法施行後、県内では既に104団体が解散した。

 それでも、県内の法人数は1443団体を数え、ボランティアが社会に定着したことを示す。大震災で芽生えた市民の活動が課題を克服し、さらに発展できるか否か。震災から約15年が経過した今、正念場を迎えている。(田中陽一)

2009/12/18
 

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