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(7)教育復興担当教員が残したもの(下) 甲南大 羽下大信さん 外の力借り成長支援
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「復興担になった先生は普段と違う立ち位置で子どもと接し、葛藤(かっとう)もあった。それが複眼的な視点につながった」と話す羽下大信さん=神戸市東灘区(撮影・山口 登)
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「復興担になった先生は普段と違う立ち位置で子どもと接し、葛藤(かっとう)もあった。それが複眼的な視点につながった」と話す羽下大信さん=神戸市東灘区(撮影・山口 登)

「復興担になった先生は普段と違う立ち位置で子どもと接し、葛藤(かっとう)もあった。それが複眼的な視点につながった」と話す羽下大信さん=神戸市東灘区(撮影・山口 登)

「復興担になった先生は普段と違う立ち位置で子どもと接し、葛藤(かっとう)もあった。それが複眼的な視点につながった」と話す羽下大信さん=神戸市東灘区(撮影・山口 登)

 阪神・淡路大震災後、被災地の小中学校で児童、生徒の心理的なケアを専従で担ってきた教育復興担当教員(復興担)の配置が、本年度で終わる。子どもの心を見つめることが主な“仕事”だった復興担は、学校に、社会に何を残したのだろう。震災後、子どもの心の回復支援に携わり、スクールカウンセラーなどの立場で復興担と接してきた兵庫教育大教授の冨永良喜さん(臨床心理学)と甲南大教授の羽下大信さん(コミュニティー心理学)に聞いた。

    ◆

 震災後、スクールカウンセラーとして宝塚市内の小中学校などに入り、復興担と接してきた。学校という場所は一般的に個別指導よりも学級経営や授業展開、集団指導が優先される。個別的、継続的な見守りは子どもの発達にとって非常に大切だが、教員が実践することは難しい。

 そうした現実の中で、多くの先生が復興担という役割に就き、個別的なかかわりを持ったのは貴重な体験だ。人には、立場が意識を決めるという側面があるからだ。

 また子どもが問題を起こしたときに、震災という背景に目を向ける“練習”を積んだことも意義がある。その子のせいではなく体験が影響している、というとらえ方は、訓練を受けなければなかなかできない。

 学校の先生には「担任を持って一人前」とする文化がある。その影響は復興担にも及び、指名されたら幾分、複雑な気分にならざるを得ないという空気はあった。復興担になった先生が、そのポジションを積極的に活用しようという意志を見せた場合は、価値がぐっと上がったが。

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 私の出会った復興担は、学校で飼っているウーパールーパーの世話をしながら、よく子どもたちと会話していたが、そこから震災の体験をくみ取ろうと意識しているのがうかがえた。目立たないが、そういう時間は子どもがほっと息がつける“すき間”のような、大事なもの。良い悪いを判断するだけではない先生が近くにいることの意味は、決して小さくない。

 復興担の配置は本年度で終わるが、その精神が受け継がれていけば、制度は時代に応じて新しくつくればいい。(教室に入り、発達障害などのある児童らをサポートする)「特別支援教育支援員」が全国で2007年に導入されたように、教員がほかの人の力も借りて子どもの成長を手助けする、という考え方は広がりつつある。

 復興担の理念は今、支援員やスクールカウンセラーのような外側の人たちにも担われ、学校に入っている。今後、それを継承するためには、教職員だけでなく外部の人を交えて問題解決を図る場を持つことが欠かせない。(聞き手・新開真理)

=おわり=

略歴 はげ・だいしん 1949年生まれ。川西市子どもの人権オンブズパーソン代表、NPO法人子どもフレンドリーネット・神戸の理事長を務め、教育現場とかかわる。

<教育復興担当教員>

 阪神・淡路大震災直後の1995年4月から、国の特例措置として通常の教員定数に上乗せし被災地の小中学校に配置。担任を持たず、児童らの心理的なケアや防災教育に専従で当たる。2005年度、「大震災に係る心のケア担当教員」に名称を変更した。

2009/12/3
 

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