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ビニール袋から防寒着を作る=神戸市中央区、ハーバーランド
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ビニール袋から防寒着を作る=神戸市中央区、ハーバーランド

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【大災害 その時どう生き抜く】

■サッカー日本代表元監督、岡田武史さんと学生が学ぶ

 「震災が起き、ガスや水、電気など生活インフラの供給が止まり、限られた物資しか手に入らない避難所の状況」を想定しながら、避難者が生き抜くためのスキルや心の持ちようを学ぶ1泊2日の「避難所体験合宿」(117KOBEぼうさい委員会主催)がこのほど、神戸市内で開かれた。参加したのは「117KOBEぼうさいマスター」を目指す学生10人。合宿には初日から「アンバサダー」として、サッカー日本代表元監督の岡田武史さんが加わり、実際に体験して考えること、そして震災の教訓を伝え続けることの大切さを説いた。

▼サバイバル研修

ロープワーク、テント設営、火おこし… 緊急時のスキル教わる

 神戸空港島の造成地を使って行われた避難所体験合宿には神戸・阪神間の大学から10人の大学生が参加。最初の自己紹介ではスタッフも含めた全員が、それぞれ呼んでほしいあだ名をポーズ付きで披露し、緊張感を解いた。

 サバイバル研修の最初はロープワーク。「救助用」「テントを支える」など代表的な5種類の結び方をスタッフから教わった。昼食後はドーム型テントの設営方法を学んだ後、避難現場での救急法の講義。スタッフからは「最も気を付けてほしいのは、けが人の血に直接触れないようにすること。感染のおそれがある」と手袋着用の重要性を学んだ。

 夕方は実践研修として3グループに分かれ、震災が発生した直後の状況を想定しながらテントを設営し、たき火をおこして夕食に備えた。その後「1人になる時間」が設けられ、一人一人が45分間、「震災発生時にどんな心構えをもってどのような行動を起こすか」について考えた。

 夜は岡田さんとともに、大テントの中で車座対談。自身で体験したことを基に考え、行動することの大切さを語り合った。外は強風が吹き、時に強い雨が打ちつける天候。各自テントで就寝した。

 2日目は、支給された米を各自が空き缶を使って炊いて朝食をとった後、2日間の体験プログラムを通じて感じたこと、学んだことを各自振り返りシートに記入し、合宿を終えた。

▼「117KOBEぼうさい委員会」の取り組み

 学生らが防災、救命を啓発

 「117KOBEぼうさい委員会」は阪神・淡路大震災から20年目に神戸市と神戸新聞社が立ち上げた組織。県内8大学の学生約40人とともに防災、救命に関する普及啓発活動「117KOBEぼうさいマスタープロジェクト」に取り組んでいる。

 メーン事業は「117KOBEぼうさいマスター」。実行委が新設した称号で、市民救命士資格取得(必須科目)とともに、防災・救命活動の専門家によるウェブ動画講義(5科目)の視聴で取得を認定する。

 大学生らが参加する各種ワークショップや避難所体験、フットサル大会での救命措置講習などの活動は、ラジオ出演や新聞、ソーシャル・ネットワーク・システム(SNS)を使って発信。防災情報の共有や意見交換を図る。

 このほか、学生メンバー同士で「災害に強い神戸の未来像」について意見を取りまとめ提言▽来年2月15日に神戸空港島で称号取得者らを集めた防災イベントを開催▽東北被災地へメンバーを派遣し、現地学生と交流-などに取り組む計画。

 プロジェクトではサッカー日本代表元監督の岡田武史さんをアンバサダーに、「キャプテン翼」などの漫画家高橋陽一さんをサポーターに迎え、多くの市民や大学、企業に参加を呼び掛けている。

▼岡田武史さん プロジェクト活動を語る

 極限の状況 経験して

 岡田さんは1997年10月、サッカーのワールドカップ(W杯)フランス大会アジア最終予選の成績不振で更迭された加茂周監督の後を受け、急きょ監督に就任。「もし負ければ日本に住むことはできない」と妻に告げるほど、敗退が許されないプレッシャーの中で戦い、初のW杯出場権を獲得した。

 「最終のイラン戦の直前には『自分は命がけでやるが、負けたとしても自分のせいではない』と開き直ることができた。それから怖いものがなくなった」という岡田さん。監督退任後は、若い世代が自然の中で考え、トライし、チャレンジできる野外体験の場づくりに取り組んできた。

 「人間は本来、環境の変化に適応しながら生きてきた動物。ところが、日本人が築き上げてきた安全、快適、便利な社会は、遺伝子にスイッチが入るチャンス、すなわちたくましく生き抜くための機会を若者から奪ってしまった」と、極限の状況を経験してもらう取り組みを始めた理由を語る。今回の避難所体験合宿に協力することになったのも、そうした思いがあるからだ。

 2011年3月、東日本大震災が発生した際には「自分にも何かできることはないか」と考え、震災から約3週間後、子どもたちにサッカーを教えるために被災地に向かった。グラウンドで子どもたちとサッカーをしていると、一人のおばあちゃんが加わって子どもたちも盛り上がった。その様子を見て、また避難所にいた人たちがサッカーを見るために外へ出てきた。みんな笑顔だった。

 「先の希望が見えない時こそ、子どもたちの笑顔が人間の希望になると感じた」

 「117KOBEぼうさいマスタープロジェクト」では、12月のフットサル大会にも参加する予定。「チームスポーツでは、メンバー同士がコミュニケーションをとり、互いを認め合ってチームワーク、リーダーシップを学ぶことができる。例えば避難所のリーダー。求められるのは理屈ではなく、避難所にいる全員の命を守るという思いだ。このプロジェクトを通じて、震災のような極限状況でもあきらめずにタフに生きる力を身に付けてほしい」と話す。

2014/12/11
 

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