エッセー・評論

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「魔都」復活はいつ? 「命」の源が届く 陰性の証明 扉の向こう側 夜散歩@自宅敷地
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「魔都」復活はいつ?

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 上海市で続く新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)にようやく出口が見えてきた。市当局がこのほど行った記者会見で「6月1日から6月下旬にかけ、企業の生産活動と市民生活を『正常化する』」と発表したのだ。

 既に一部の行政区でタクシーやマイカーの通行も可能になった。発表の翌日には時間、人数、区域の制限付きだが、47日ぶりに自宅の敷地外にも出られた。

 当初、4日間とされた封鎖は既に2カ月に迫ろうとしている。戦う相手はウイルスだと自らに言い聞かせながらも、息の詰まるような日々に何度も心が折れそうになった。封鎖解除へ動き出したばかりだが、喜びを抑えることができない。

 上海に住み始めて四半世紀以上が経つ。地震や洪水といった大規模な自然災害にこそ見舞われなかったが、2000年代初めに感染が広がったSARS(重症急性呼吸器症候群)、日本政府による尖閣諸島国有化をきっかけに中国各地に拡大した大規模反日デモなど、危機に直面したことは何度かある。2年前の3月、コロナ禍の中、帰省先の神戸から戻った際はホテルで2週間の隔離生活を強いられた。ただ、今回のロックダウンは全く次元が異なる。平穏な日常を足元から大きく揺さぶられた思いだ。

 まばたく間に世界中に広がり、仕事のやり方など社会経済活動や生活習慣、価値観までをも根底から変えた新型コロナウイルス。収束に向かうのかと思えば、変異株がリバウンドをもたらし、先行きがなかなか見通せない。ただ、上海では、ITを駆使した健康コードによる管理や、徹底した検温、隔離等、いわゆる「ゼロコロナ政策」が奏功。市民の自衛意識の強さもあり、欧米や日本などに比べ、早い時期にコロナ禍以前の暮らしを取り戻せていた、そのはずだった。それが感染力の極めて高い、オミクロン株を前にいとも簡単に崩れてしまったのだ。

 ロックダウン下の不自由な暮らしについては、日本にも詳しく伝えられていることだろう。外出ができず、食料品や日用品などは政府から配給されるが、とても十分とは言えない。中国はネットスーパーが普及しているが、そもそもロックダウンで物流が途絶えている。感染したり、感染者と同じ集合住宅に住んでいたなどの理由で隔離されたりするケースも少なくなく、ドライバーも確保できない。個人が生活必需品を手に入れるルートはほぼ閉ざされた状態になってしまった。

 ただ、そこはたくましい「上海っ子」。窮地を脱するのに活用されたのが、グループチャットだった。もともとは住民同士の情報交換のために始まったが、このネットワークで食材確保からボランティア募集、居住委員会(町内会のような存在)、政府からの通達を含め大きな役割を果たしていく。

 個人では手に入れることが難しい食料品、日用品でも、グループ購入であれば、売る側も一度に多くの量がはけ、喜ぶ。一方で配送にかかる車両やドライバーも少なく抑えられる。発注側も商品を厳選し、住民のニーズに応えていく。今やグループチャットを利用した団体購入は、上海で最もポピュラーな買い物方法と言ってもいいかもしれない。

 各グループには団長と呼ばれる仕切り役が存在する。住民の意見をまとめながら業者との交渉、注文数の管理、商品の発注、料金の先払い、商品の到着確認、商品による仕分け、商品到着の連絡、消毒まで。場合によっては配達も含め、団体購入の全てのプロセスを管理、責任を負う。初めから購入先のリストがある訳ではなく、さまざまなネットワークの中から探し出すのだ。

 日本の大都市と同様、ここ上海でも隣近所とのお付き合いは希薄、それどころか言葉を交わしたこともない、顔を合わせたこともないという人も多かったはずだ。さまざまな制約を受ける、厳しい環境に置かれながらも、グループチャットでは、住民間のコミュニケーションが途切れることはない。屋外に出ることが許された場所では、笑顔で挨拶を交わす姿も見かけるようになった。物々交換なども自然発生的に行われていると言う。

 私もロックダウンをきっかけに、近所の人たちとの距離を縮めることができた一人だ。中国人は個人主義だ、とビジネスの世界では言われていたりもするが、実はここぞという場面での団結力は半端ないのである。

 上海市当局の発表はあったが、完全解除のめどが立ったとはまだ言えない。市民が大手を振って、街中を自由に出歩けることができる日まで、グループチャットの中で団長の呼び掛けが続く。

 「こんな商品があるけど皆さん興味ある?」

   ◇       ◇        ◇        ◇

 大変ご無沙汰しております。コロナ禍で経済活動や国外との行き来が滞る中、このコラムもしばらくお休みをいただいておりました。世界的に感染状況が落ち着いてきたとはいえ、先行きは依然、不透明です。今回、1カ月半以上も続くロックダウンの経験を、日々思ったことを、モノクロ写真とともに神戸新聞の読者の皆さまにもお伝えしたいとパソコンに向かいました。早くコロナ禍が収束し、再び上海の街の魅力、ふるさと神戸への思いなどを、コラムを通して発信していきたいと願っております。引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。

 ロックダウン下の上海にて

 金鋭

2022/5/19
 

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