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粋々農業女子

【8】3代目、独自ブランド立ち上げ 八鹿畜産養豚部(養父市)小田垣縁さん(34)

2020.01.28
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道の駅「ようか但馬蔵」でブランド肉「おだがきさん家の八鹿豚」の精肉とソーセージを手にする小田垣縁さん=養父市八鹿町高柳

道の駅「ようか但馬蔵」でブランド肉「おだがきさん家の八鹿豚」の精肉とソーセージを手にする小田垣縁さん=養父市八鹿町高柳

 「但馬牛のようなトップブランドにする」。目標が定まったのは但馬農業高校3年の時だった。日本学校農業クラブ全国大会で、祖父が起こし、両親が継ぐ養豚の魅力を発表。最優秀賞に輝き、3代目になることを決意した。東京農大短期大学部で本格的に畜産を学び2006年春、20歳で養豚の世界を歩み始めた。

 1978年、祖父ら旧八鹿町各地の養豚7戸と養鶏8戸の農家が「八鹿畜産」を設立し、当時西日本最大級といわれた畜産団地を同町三谷に開いた。年間出荷7千頭を超す豚の一大産地はその後、バブル経済終息や飼料価格の高騰、10年の家畜伝染病口蹄疫(こうていえき)の国内発生などで、養豚農家が次々に廃業。12年末には、1軒だけになった。

 「当時は売り先も大手飼料商社の言いなり。加工品作りなんてとんでもなかった」。それでも弟幸宏さん(32)ら家族と前を向き、改革を進めた。

 豚のことを第一に考え、飼養頭数を約2千頭から約800頭に縮小。商社と縁を切るため、地元商工会の経営者らを訪ね、取引先探しに走り回った。

 13年夏、独自ブランド「おだがきさん家(ち)の八鹿豚」を立ち上げた。養父市の洋菓子店「カタシマ」のケーキの切れ端を餌に取り入れるなど工夫を凝らし、以前の比にならない肉質、うま味を実現。今では20社以上に年間2千頭以上を出荷する。精肉だけでなくハムやソーセージの委託加工も始め、東京や大阪の料理店からも問い合わせが入る。

 「今怖いのは豚コレラ(CSF)」。出荷業者も豚舎から約1キロ離れた専用施設までしか立ち入らせない。赤ん坊のころから豚舎で育ち、200キロを超す雄豚も「かわいい家族のよう」と目を細める。祖父から続く八鹿豚を守り、一大ブランドに-。真っすぐ目標を見据える。(山路 進)

【メモ】5棟の豚舎で約1400頭を飼育。飲み水は近くの山から引く天然水を使う。3年前に結婚。「夫も休みに手伝ってくれる」と喜ぶ。