粋々農業女子
【2】安心掲げタマネギ栽培 ファーム池上(淡路市)齋藤亜紀美さん(38)
「代々続く実家の土地を守りたい」。生まれ育った兵庫県淡路市で、早生(わせ)から晩生(おくて)まで8種のタマネギを育てる「ファーム池上」を切り盛りする。県内屈指の広さ約7ヘクタールの畑で、年350トンを栽培。神戸や姫路、東京や大阪などの直売所やスーパー、飲食店に出荷する。
大学は理工学部。大学院に進み、物質理工学を修めた。南あわじ市の中学校で教べんを執り、2008年に結婚。夫の故郷福島県で専業主婦をしていた。
11年3月、東日本大震災が起きた。物がなくなる-。中学2年で経験した阪神・淡路の記憶がよみがえり、すぐに1歳の長女と実家に避難した。その年、父の建設会社が農業参入。その手伝いで始めたのがタマネギ栽培だった。
同年夏、父の会社の社員らと初の収穫。JAや市場に出したが、売り上げは思うように伸びず、神戸や姫路を営業して回った。
翌年には「娘に食べさせたいタマネギにしよう」と減農薬に取り組み、「兵庫県認証食品」に。さらに山から切り出した竹の粉を畑に混ぜ込む土壌改良を進め、甘くやわらかな特長をPRしようと商標「あやたけ」を登録。一般的な農法より農薬を5割以上減らして「ひょうご安心ブランド」の認定を受けるなど訴求力を高め、大阪や東京の商談会で販路拡大に努める。
小学4年生になった長女、淡路で生まれて幼稚園に通う6歳と3歳の娘も畑に連れながら育てた。福島県で教員をしていた夫も6年前、兵庫県教育委員会に転籍。毎朝、家族の食事の支度や見送りを済ませてから仕事にかかる。
「体力はいるし、休みもないけど、仕事をしながら子どもたちとの時間を持てる。でも、自分がやるなんて考えたこともなかったですけどね」。青々とした葉が広がる畑に笑い声が響いた。(山路 進)
【メモ】畑は当初の2ヘクタールから、実家で営んだミカン山などを父の建設会社が整備し拡大。株式会社池上の取締役。近く代表就任予定。