粋々農業女子
【4】家庭菜園から天職に あきふぁ~む(たつの市)三木亜紀さん(42)
15年ほど前、自宅でテレビを一緒に見ていた夫が口にした。「面白そう。やってみようか」。番組では、男性アイドルグループが野菜を栽培していた。「自分たちで作った野菜を食べてみたい」。近所の農地を借り、家庭菜園として始めた“土いじり”が、気付けば“天職”になっていた。
毎週末、夫と畑へ。入門書を片手にジャガイモやナスなどを育て、余った野菜を近所の直売所に並べた。「もっといろいろな野菜を育てたい」とやる気がむくむく。2011年、夫や自身の両親と一緒にビニールハウスを建てた後、農園を「あきふぁ~む」と称して、モロヘイヤづくりから本格的に農業を始めた。
小学校に通う2男1女の母。子どもたちを背負いながら栽培、出荷を続けてきた。「家族に安心、安全な野菜を食べさせたい」と少しずつ規模を拡大。6棟のハウスと露地の計約1ヘクタールで葉物や根菜、ネギなど10種類以上の野菜を育てる。夫も会社に勤めながら水稲を栽培。耕作の依頼も舞い込むようになり、今では約5ヘクタールの水田を管理する。
3年前、たつの市内で新規就農した仲間たちとともに「たつの赤とんぼクラブ」を立ち上げ、会長に就いた。メンバーはコメや野菜、花きなど多彩な品目を手掛ける21人。若手で地元の農業を盛り上げようと、互いに経営の相談や販路拡大策などを話し合い、食育活動も担う。昨年からは同クラブで地元食品メーカーからネギの栽培も請け負う。
帰宅後に子どもたちと食卓を囲み、一緒にお風呂に入り、寝かしつけた後に帳簿を付ける日々。生産も安定し、収益も見込めるようになってきた。最近、6年生になった長女のママ友から、娘の言葉を伝え聞いた。「ママが作った野菜はおいしいんやで」。自然と頬が緩んだ。(山路 進)
【メモ】パート数人を雇用。産直スーパーを中心にモロヘイヤをはじめ、ナス、ピーマン、スイカ、サツマイモ、大根などを通年出荷する。