災害が起こるたびに、音楽は「不要不急?」と問われる。その一方で「音楽は心の栄養」とも云(い)われている。現代音楽の初演を担う専門的な活動に没頭していた頃、充実した日々の中で何か物足りないものを感じていた。阪神・淡路大震災直後、一時音楽は不要不急と封じられたが、音楽は復興の力になると認識され、色々(いろいろ)な所でコンサートをさせて頂いた。
震災の1年後、神戸市立中央市民病院での出来事は忘れることができない。会場となったロビーでは多くの患者さんが集まってくださり、点滴スタンドが林のように立ち、移動ベッドが並んでいた。終演後、一番前に座っておられた女性が「私、今の自分に腹を立てている。何でパジャマとスリッパで音楽を聴いているんだろう。絶対退院してお洒落(しゃれ)をしてマリンバのコンサートに行こうと決心した」と話しかけてこられたのである。
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